詰め込むだけ詰め込んだ内容に、久々に監督まで務めたシドニー・ポラックの並々ならぬ気迫を感じるものの、それが故に肝心の謎解きが複雑になっている点はマイナス。もう少し内容を整理してすっきりした脚本の元で娯楽に徹した方が正解ではなかったかというのが正直なところだ。

ただし、それでも細かな編集をベースに最後まで押し切った力量は素直に認めざるを得ないところだ。サスペンスの盛り上げ方自体も及第点で、全体の印象としては悪くない出来の作品となっている。

とまぁ、作りに関していうとこのような感想になるわけだが、この映画の肝はやはりニコール・キッドマンとショーン・ペンという今いちばん旬の役者を観るというところにあるわけで、その点でこの映画は成功を収めていると言ってよいのではないかと思う。

間違いのないように記しておくが、この映画における２人の演技が今までの作品に比べて突出しているとは思わない。いやむしろこの２人ならこのくらいの芝居はして当然だというレベルであるのかもしれない。しかし、こういった映画で大事なのはニコール・キッドマンが間違いなくニコール・キッドマンであるか、またショーン・ペンも間違いなくショーン・ペンであるかという点であり、それに対して自分は大いに満足をしたのだから、もうそれだけでこの映画は価値あるものだというのが私の結論である。