個人的なことで恐縮だが、僕はちっさい頃からアイドルとかに興味を持ったことがない。今でも俳優で映画を観ることは殆どなく、監督かストーリーかマイケル・ナイマンかビットーリオ・ストラーロかその辺りで適当に選んでみる。キャスティングはある程度互換性がきくものであり、「あの登場人物は○○でなければならない」とか思うことはめったにないから。ただし、やっぱ『シャイニング』の狂ったオヤジはジャック・ニコルソンだな、とか『ダーティー・ハリー』がウディ・アレンだったらおもろいけど様にならんな、とか『ロッキー』がダニー・デビートだったら観たくないな、いや、ある意味観たいかも知れんな、とか思うことはあるけど、そんなことより、もっと気になることのほうが多い。

この映画の脚本は練りに練られて、まさにストーリーの質にこだわるフランス映画の面目躍如たる面があると思うし、練られた脚本にふさわしい映像と編集で飽きない。ただし、個人的にはこのストーリーは全く好きになれないけど。

さて、バンサン・カッセル……彼はかっこいいのか？　僕にはさっぱり分からないな。アラン・ドロンの流れを汲む美形派ではないのは観れば分かる。恐らく、ジャン・ギャバンやジャン・ポール・ベルモンドなどの流れを汲む美形じゃないけど、味のあるそこそこかっこいい俳優というポジションなんだろう。 ところでこの映画においてカッセルの役は三人の美女に（はっきりいってみているほうが嫉妬を感じるほど）一途に愛される。この役がギョーム・ドパルデューやメルビル・プポーなら嫉妬を感じることもないだろうが、マチュー・カソビッツでも妥協しよう。でもカッセルってかっこいいのか？　まあ、この辺は浅野忠信や豊川悦司のこともあるから日本人がとやかくいう資格はないのだが。カッセル演ずる男はその上に内面も空疎でなんの魅力も感じない、まさに（あくまでも私見だが）観客の感情移入を拒むようなキャスティングで少々まいった。

もう一つ。モニカ・ベルッチvsロマーヌ・ボーランジュ。ロマーヌはデビュー当時の初々しさを思い出す。当時はシャルロット・ゲンズブールが先輩的なポジションだったけど、ロマーヌのほうが可愛いし、女優として親父並みの大物になって欲しいのだと思ったものだ。いや、思ったと思う。それにロマーヌという名はリシャール親父が尊敬するロマン・ポランスキーに因んだという真偽の定かでない噂もあり、ポランスキーの好きな僕としては応援に力が入るってもんだ。さて、しかし最近のロマーヌはまだ俳優として父よりでかくなったとはいえないが、乳がでかくなったことは間違いない。実際、その巨乳ぶりは将来的には父を越えるということの手の込んだメタファーではないかと思わせるほどだ。だが、背が低くて巨乳、頭が大きくて髪が多いため妙にアンバランスな印象も受ける。それに比べるとモニカのすらっとした背の高いスレンダーな肢体とロマーヌのような甘い可愛さではなくキリッとした知的な美しさを感じさせるルックスのほうが（遥かに）魅力的に思ってしまう。十人十色、蓼食う虫も好き好き、それはわかっていても、モニカのほうがロマーヌより（遥かに）魅力的に思ってしまう、ともう一度念のため書いておく。で、ロマーヌ演じる女は「恋のための罪を犯す」ことを平然と告白する非常に嫌な女で、自分の恋愛成就のために平気で嘘をつくし、他人の人生をボロボロにするし、間接的にモニカを殺しちゃうし、で性格的には救いようがない。性格ブスならルックスが美人なのかといえば、一般的に男にとってモニカのほうがロマーヌよりルックス的に魅力的なのではないか？　「クイズ＄ミリオネア」のオーディエンスで調べてくれ、みのもんたよ、あっ、【】は不要か。

つまんないことをうだうだと書いてきたが、僕の中では脚本とキャストが相乗効果で映画の質を高めているとは思えず、後味の悪い“悪女物”の脚本の説得力をキャストが損ねているように感じてしまった。で、最後にバンサン・カッセルってかっこいい？