バカみたいな話だが、これは重要な点と思うのだ。『ゴッドファーザー』の世界は、我々が聞き慣れぬ様々なイタリア系の名前で埋め尽くされている。コルレオーネ、クレメンザ、テシオ、ルカ・ブラージ、バルジーニ、タッタリア、ソロッツォ…　これら美しい響きの名で構築された大伽藍に、この「トニー・ベネット」という実名（芸名）が深刻な打撃を与えていると感じる。「ゴッドファーザー」の世界にはモデルとなった実在のマフィアたちがいて、映画は美化した模倣にすぎぬ。ひとつの実名が、そんなつまらない事実を思い出させるのだ。この映画が描く1979年にトニー・ベネットがいるなら、マイケル・ジャクソンだってソロデビューしていた筈だ。前年1978年にはマーロン・ブランドが『スーパーマン』にチョイと出演して『ゴッドファーザー』の倍のギャラを稼いでいた。オレはやっぱりこのパート3を真剣に観ることができない。時代が違う…