欲深さ故に疑い、守りに入った。

優しさ故に女子供を手に掛ける事が出来なかった。

純粋であるが故に親友や妹の些細な裏切りを許す事が出来なかった。

彼の中の僅かな「倫理観」が自身の運命を断ち切ってしまうという皮肉。

「俺はクズじゃねぇ、見くびるな！！」

今まで積み上げてきた積木が崩れる恐怖と戦いながら独り抵抗し必死にもがく人間の「悲哀」。

「俺がトニー・モンタナ様だ！！」

常識の全く通用しない不条理な世界。最も忌むべき「敵」はその手厳しいルールではなく、あまりに人間的すぎたトニー自身の「心の隙」だったのかも知れない。