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[コメント] 太陽の帝国(1987/米)

史観としていかがなものかと疑問に思う。そもそも中国を舞台にしておきながら、中国民衆をひたすら無視して、侵略者同士の交流を主題に置くとは失礼極まりない。
HW

この映画の基本姿勢は、まるで「日本人も悪くない、頑張ってたんだよね」「あの戦争は両国にとって不幸でしたよね」とでも言わんばかりの日本側に対する尊大な‘白人の旦那様’の好きそうな奇妙な同情的態度と、その戦争の最大の被害者であるはずの中国民衆を作中から意識的に排除して作り上げた太平洋戦争を単純に日米二国の対立とする捉え方、だと思う。初めてこの映画を見た時から、どこかしっくりしないものを感じていたが、多分この問題がそれだったのだと今になって思う。実際、この映画は妙に帝国日本に肩入れしている感じがあるし、一方では中国人の扱い方は酷い限り。自分には、その両方共がとても不快であった。帝国主義・植民地主義という重要課題を語る事を疎んでいるように感じられる。

善悪を一つに断定して戦争を描くのも問題であるが、誰も悪ではなかったかのように描くのはもっと重大な問題に思える。「センソウノセイデスヨ」なんていう主人公のセリフがあった気もするが、「戦争だから仕方ない」論が通用するか?現在そして未来に、我々が必要とするのはそんな無責任な言い訳ではなく、行った事・起きた事への責任・反省といった倫理的な議論だと思う。戦争経験の無い人間が戦争を語るのは何かと反発を喰らうと思うが、「戦争経験者の意見が正しい」という考え方も随分軍国主義的発想に思えるので、遠慮せずに言わせてもらうと、スピルバーグ監督の史観・戦争観は、少なくともこの映画の限りでは、大変浅く幼稚なものだとしか思えない。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ジョー・チップ

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