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[コメント] 笑の大学(2004/日)

お国のため、お金のため、お肉のため。(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







取調室が次第に熱を帯びまさにその場が舞台になっていくところとか、おそるおそる幕を開いたときに役所広司が浴びた演芸場の光と熱気の描写など、同じ三谷幸喜脚本の『12人の優しい日本人』よりも舞台を映像化した成果があったのではないか。

世情(お国)のため、視聴率(お金)のため、さしあたりの生活資金を得るため(別の意味で「お肉のため」)、いつの時代でも作家は自分が本当に書きたいものを捻じ曲げられる可能性がある。どのような苦境にあろうとも、作家はその困難に挫けることなく、うまく巧妙にぶつかりそれを乗り越えることでよりよい脚本を産み出すことができる。予告編において演芸場で涙を流す役所広司の姿を観て、そのような話が展開されると思っていた。しかし、ここでの三谷脚本は現実的な部分への目配りを忘れていない。いくら努力しようとも個人の力ではどうすることもできない時代のうねりが存在し、そこに志半ばにして呑み込まれていった優れた才能を持つ先人がかつていたことを忘れてはならない。唐突でいくらか感傷的に過ぎる結び方ではあったが、その背後には三谷の冷静な視点が介在していたのだと思う。(★3.5)

(評価:★3)

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