自分の心の中に蠢く欲望に衝き動かされ、周りと衝突して相手を傷つけ自分も傷つけいかないと生きていけない二人。二人は精神病棟で出会う運命にあった。似たもの同士である二人は強い欲望に支配されながらも、心の奥底には慈悲の気持ちが宿っていた。いつしか互いの心の奥底を感じ絆ができはじめたところで、別離の運命が待ち受ける。

イスタンブールでの再会時、二人は何度もセックスをして互いの絆を確認する。しかし、数年の年月が経過してお互いが少し変わったことも悟るのだが、そのことで余計な言葉を交わすことはない。帰宅後女は駆け落ちの身支度をしているが、実は既に男と過ごした安宿で今の家族のもとで留まる決断をしていたのかもしれないし、男も既に女が来ないことを知っていたのかもしれない。欲望のままに生きてきた二人は、互いの前でそうした抑制ができるほど「大人」になっていた。

完成された静謐な作品よりも、例えばキム・ギドク作品のように粗が多少あろうともエモーショナルな作品が好きだ。そんな私の嗜好を満たす作品だった。