じゃあ、誰を置くのか？と問われると、うーん、と唸ってしまうので、松田龍平しか選択肢はなかったのかもしれない。しかし、不自然だから良かったのだということではなく、この世界観を色濃く反映する存在とはどうしても思えなかった。他の人がいいパスを出しても、全部つぶしてしまっている印象を受けざるをえなかった。（演技云々ではなく、存在感として）

ただ、他の役者陣はよかった（浅野忠信は怪しいが…）。不評の字幕も、本作独特の奇妙なテンポを生み出すのに成功している。

かつて『戦場のメリークリスマス』を観て、「何が言いたいのか？」と言った知人に、映画は世界を構築していくもので、必ずしもその問いに答えるものではないと生意気にふいたことがあったが、本作もそのように捉えるものであると思う。 崔洋一のあの不自然な眼の動き、やばい世界に迷い込んでしまったとばかりにおびえるような田口トモロヲのあの居心地の悪さ具合、筋を曲げにきたとしか思えない坂上二郎とトミーズ雅の存在。それがエロスなのかどうかはよくわからないが、間違いなく閉鎖的集団としての新撰組（史実の新撰組という意味ではなく）とそれを取り巻く閉鎖的空間としての京都（同地平に存在している京都という意味ではなく）などにより、大島による一つの世界が展開されていて、それを楽しむことができた。

うーん、しかし肝心の松田龍平の無骨な声と佇まいがどうにも受けつけられない、これは個人的な好みの問題かもしれないが…。★3.5