[コメント] アダプテーション(2002/米)
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ありふれた日常に倦んだ時、人は未知のものや意外なものに神秘性を感じたりする。蘭がお好きな方には失礼かもしれないが、蘭という目立たない植物について突き詰めていくのは、(一般的には)十二分にマイナーで未知の分野に属する。インテリと思しきジャーナリストの女性は、日常を省みずに蘭を集める男の内に神秘的なものを見出そうとする。主人公の脚本家は、その「神秘」に魅せられていく女性の「知的」な香りに惹かれ、彼女を追いかける。
しかし、現実を紐解いてみれば、彼女は男の提供するドラッグに溺れていただけで、B級作品の筋書きにあるような、ありふれた「非日常」を求めて転落していく中年女性の醜態となんら変わりのないものだった。そして作品は、ありふれたハリウッド的なスペクタルに回収され、最後にはささやかな愛という、これまたありふれた主題を謳いあげて終幕を迎える。
一応のハッピーエンドを迎えながらも、作品全体を通して浮かび上がってくる印象は、まあ現実なんてこんな程度のもんだ、という諦念の雰囲気である。その意味では冒頭での主人公の情けない自己を曝け出した独白が、本作の全てを語っていたような気がした。
あまりにもチャーリー・カウフマンの姿が焼きついてしまい、監督がスパイク・ジョーンズであることをすっかり忘れてしまっていたが、この二人のタッグによるひねくれ具合は結構好きだ。ただ、芯に通っているものがさほど太くないため賞賛する気にまではなれないが、『マルコヴィッチの穴』よりも彼らの個性が色濃く反映された好作だとは思う。(★3.5)
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