ひとつは、アートを体現するDr.レクターにふさわしい死に様について。なぜ復讐者は豚を使おうとしたのか。残酷さとかいう以前にそこに何か深い意味が隠されているような気がしてならなかったのです。詩的芸術をもって迎えることが芸術家への礼儀、とか。結局明確な答えは出てきてませんが、そんな妙な部分を深く裏読みしつつ考えるのは結構興味深かったです。

　もうひとつはもちろん、Dr.レクターとクラリスの関係。映画でも原作でもストレートに恋愛関係ということになっていますが、そんな笑い話は完全無欠かつ孤高のDr.レクターに限ってあってほしくないので、それは置いておいて本当のところ（ほとんど実在の人物との区別がついてません）はどうなのか、とか考えてしまいました。個人的には、父娘関係か師弟関係のようなものを想像します。もちろんその娘または弟子の顔はジョディーです。

　ジュリアン・ムーアは好きだし悪くはなかったけど、私と私の友人に現実と虚構の区別をなくさせるぐらいのレクター像を与えたのは、間違いなく本作ではなく前作で、本作で見てしまった彼の意外に普通のおやじな部分は完全無視を心に決めていますので。