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[コメント] 日蔭のふたり(1996/英)

マイケル・ウィンターボトム(ス)・インヴェイジョン。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







★4.5

極めて高品質な映画だ。最高。正直150回ぐらい唸らされてしまった。なんていうか、映画を観ている最中、珍しく直に監督の力量みたいなものがひしひしと感じられてきたのだ。普通の監督が原作を映画化したら、十中八九が地味で退屈で大味な文芸モノになるはずだ。それをこのテンションで2時間弱ひとときの無駄もなく持続させるとは!

私が日ごろ思っていることなのだけれど、映画の魅力は決して文章や文字からは伝わってこない。恐らく原作(未読、というか原作がある場合はまずそれを読まないことにしている。単に本をあまり読まないとの説もあります)は地味なのだろう。先も述べた通り映画化したらあまり魅力的にはならないと思う。これは一般の監督がそうした場合。

だが、映画は実際に観てみないと決してわからないのだ。映画以前のストーリーの面白さはさほど重要なことではないと声を大にして言いたい。大事なのは「ストーリーをどう面白く見せるか」なのだ。更にいえば、ジャンルも関係ない。結局、監督は(大体の場合)良い映画を作ればいいのだ。どんなストーリーでも関係なく何故か面白い出来に仕上げてしまうというのは才能によるものなのかもしれない。個人的に、これに当てはまるのはウィリアム・ワイラーフランソワ・トリュフォーだと思っている。この映画の監督はもしかしたらそうした天与の才があるのかもしれない。

抽象的なことばかり述べてきたので少し具体的なことを。

まず映像のセンスが抜群に素晴らしい。特にオープニングのモノクロは★10をつけても良い。それと役者。緊張感が全編に漂っているので彼らの演技や表情にかなりの集中力を持ってみることが出来た。

最大のヤマ場は何といっても子供自殺シーンだろうか。全く予想できなかったので、全身鳥肌が立った。この衝撃は幾分唐突だった為だろうが、子供が苦悩する場面は大部分を省略していたからだと解釈した。ただ、この場面がなくても、自分の評価は変わらないと思う。

こんなに暗く、救いの無いストーリーにも拘わらず観賞後とても爽やかな気分になり、一日中それは消えなかった。展開だけからみれば暗澹たるものなのに、不思議とネガティヴな後味は残らなかった。

マイケル・ウィンターボトムは来るかもしれん。

(評価:★4)

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