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[コメント] アラモ(2004/米)

日本でいうと忠臣蔵とか新選組とかそんな感覚なんですかね。この手の愛国心の根幹となる話って、どうしても客観を失って美化されやすいから、他国人には理解はできても共感がしづらい。そこを共感まで持っていけるだけのパワーはなかったかなって感じです。
Myurakz

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 結局いちいち引っかかるんですよ。みんながスゴくヒーロー然としてるんだけど、その生活は奴隷制の上に成り立ってるわけじゃないですか。実際ジェイソン・パトリック演じるジム・ボウイなんて、元は奴隷商人だったって話も残ってるくらいだし。しかもここで勝利して米国に編入したにも関わらず、その後南部同盟に入り連邦を脱退、結局南北戦争で負けちゃうんです。そしてその戦争のきっかけの一つが「奴隷制問題」だったりするわけですよ。そんなことを考えながら見てると、どうにも美しくない。

 何より製作陣がその辺りをわかっているようで、主役達の奴隷に対する妙な優しさが言い訳程度に描かれてはいます。そして同様に、「戦争の悲惨さ」「インディアン虐殺の歴史」などにも言い訳がなされます。だけどホントにただの言い訳。これじゃあ「戦争は空しいんだよ」「人の命は平等に大切なんだよ」と申し訳程度に一度唄って、「さぁこれで心置きなくメキシコ野郎をぶっ殺せ!」に持っていってるようにしか見えません。

 その辺が如実に出るのがメキシコのサンタアナの描き方。監督は「この作品では従来のアラモ映画と違い、人間を描きたかった」とか言ってますが、であればこの悪役はあまりにステレオタイプ。結局何だかんだ言っても「アメリカの正義万歳!」なわけです。ヒーロー譚である以上、そんな勧善懲悪に文句をいうのもどうかと思うんですけど、そんな薄っぺらな人間像が、歴史物としての面白みを半減させているのもまた事実なんですよね。

 これが日本のお話だったら、僕も余計なことを考えずに素直に酔えたのかも知れません。幕末小説を読む時に、当時の農民の困窮なんて考えないですもんね。その辺では損はしてるのかな。

 まぁそんなことを言いながら、実は後半の戦争シーンはかなり燃えました。またディヴィ・クロケットのビリー・ボブ・ソーントンは非常に好演で、何とも言えない親しみやすさが出ていたと思います。結局±0で3点。

(評価:★3)

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