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[コメント] NARC(2002/米=カナダ)

ブルー基調の淡い映像に、哀しみが宿る。複雑な思いが凝縮されるラストシーンまでのたたみ掛けが秀逸。見応えアリ。(2009.05.17.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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刑事殺しの犯人探しというサスペンスの側面もあるが、オチを一言で言ってしまえば「自殺だった」になる。こう言うと「なんだよ、それ!?」という感じだが、それでもこの映画が賞賛されるのは、犯人探しが主題ではないからだ。重きが置かれるのは、哀しみ溢れる人間ドラマ。ジェイソン・パトリックレイ・リオッタの熱演もあり、骨太な刑事ドラマが堪能できます。

この映画の中で重要な項目になってくるのが「家族」の存在。現場で働く刑事は常に危険と隣り合わせ。ジェイソン・パトリック演じる主人公は、事件を解決したいという現場での男の葛藤もあれば、危険な現場から足を洗ってほしいと妻に懇願されての悩みもある。こういった公私の矛盾を、主人公に限らず登場人物の多くが抱えているゆえに、誰にでも「家族」や「子供」がいるんだという重みが加わってくる。

ラストシーンで、その重みがずっしり響いてくるのだ。真相を知りながらそれを揉み消そうとしていたレイ・リオッタだけを、決して敵役として責めることはできない。彼には、彼の守りたいものがあって行動した結果が、これだった。安易に善悪の関係に持って行ってないところに、人間の複雑さが凝縮されているように思う。

ふと、ラストシーンでパトリックが現場から足を洗い、家族と暖かな家庭で暮らすシーンを想像してみたのだが、やはりうまく想像ができない。それは、彼も冒頭で結果として胎児を殺めるという過ちを犯しているから。その家族は幸せなのか、というとそうではないだろう。

正義と悪を定める難しさが、こういった地味な小品から湧き出てくるとは。

(評価:★4)

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