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[コメント] CHARON カロン(2004/日)

「星の名前の娼婦」と「レンガのような札束」、「とって付けたような悲劇の過去」…。いかにもなプロットだが、押し寄せるリアルさの中に隠れて光るファンタジーを描くためにはこれくらいが小気味良い…。
新町 華終

主役のCHARONは和服のやたら似合う美しい襟足と肢体を兼ね揃えた女性であるが、言ってしまえば三十路(近い?)のおばちゃん(失礼)である。

二時間で10万円。馬鹿こくでねー…ってフィクションだから。完全セックスレスな夫婦。馬鹿こくでねー…ってフィクションだから。ヤクザの愛人で出張ホステス…ここはモノホンっぽい。所々の見栄と嘘。たまに見せる軟弱さと本音。

とにかくキャラクターの描き出し(というか焙り出しに近い)が巧妙で小気味良い。

そして、白々しい顔で照れながら、男たちが純粋でロマンチックな台詞をはく度に、画面に見えないところでロマンチックな虚構の世界が創られていくこの可笑しさ。CHARONという女性にこめた彼等のファンタジー、自分もあの場にいたらこうしているだろうという願望。そしてCHARONにはこうあって欲しいという願望。すべてが詰まっていて、決して最後まで裏切られることのない稀有な良作であったように思う。

CHARONのような女性が今も昔もフィクションではないのが世の常だ。誰もが何らかの嘘をついて生きているのも世の常だ。今夜突然姿を消し、そっと街から離れていく女性がいるかも知れない。しかしそれは、女にとっても男にとっても一番ロマンチックでファンタジーな生き方なのかも知れない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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