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[コメント] コリーナ、コリーナ(1994/米)

世の中には、ユーモアに溢れているが優しくない者と、ユーモア精神を持たないけれども優しい者、そして僅かな例外がいる。コリーナはよい意味での例外だったけれど、あの時代ですら白人親子が黒人を愛するのは、「鳥と魚の愛」だった。時代ゆえの「コメディの皮をかぶったシリアス・ドラマ」。
水那岐

コリーナは頭のいい女性で、蓮っ葉でキップがいい。その上でモリーを母親の死の悲しみから救い、人生の喜びを与えてやれる包容力を持っている。モリーの父親とも愛情ともとれる関係を結ぶに至る。だが、これはコメディのカタチを借りたシリアスドラマだ。「死」にしろ、「別れ」にしろ、「差別」にしろ、世界に転がっているありとある悲劇が3人の前にはことごとく立ちはだかる。ラストは微笑みながら観ることができるにせよ、その甘さが内包する苦味は馬鹿にできない。3人が本当の家族になることは、この時代許されないことだったのだから。

余談だが、死にたいと洩らすモリーに対し、コリーナは31アイスクリームのフレーバーを4つ知ってから死ねとさとす。これを聞くと、自殺願望を相談された寺山修司が、新宿中村屋のカレーを食ってから死ねと答えたことを思い出す。死への願望などは得てして考えすぎが原因であるから、原初的な欲望を前にすれば霧散するものだというわけだ。お見事!

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)りかちゅ[*]

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