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[コメント] 地下鉄〈メトロ〉に乗って(2006/日)

都合の良すぎる時間遡行は、ファンタジーとして見ても正視に堪えない。SF的設定を、身の程を知らない人がさも得意げに操ってみせると、こんな無残な作品が生まれるという好例。子供だまし以外の何物でもない。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







大体、最初は地下鉄がタイムスリップの引き金であり、同時にテレポーテーションまで行なう道具立てになっていたのだから、当然あの地下鉄に謎があるのかと思ったものだ。しかし、そのうち地下鉄などどうでも良くなり、また主人公の情婦までも引き込んで、まぶたの父劇場は所構わず開幕してしまう。理由としては、小沼一族に時間遡行能力が宿ってでもいる、としか(マジメに取ろうとすれば)考えられないではないか。

それだけではない。主人公を大切にするという美名のもとに、岡本綾は若き日の母の胎児を殺すことで、自分の存在を消し去ってしまう。ちょっと待て。そこまで大それた歴史操作をしたのでは、世界はその影響で凄まじい変化を起こしかねないのだぞ。堤真一が、情婦だけがすっぽり抜け落ちた元の世界(にそっくりの世界)に帰れたのは、ほとんど奇跡的な幸運であることに疑いはない。

どちらにしろ、ここまで都合のいい時間遡行物語は史上例を見ないだろう。これはSFではないにしろ、もう少し未知の現象を扱うときは謙虚に研究した上で、それを創作に活かしてほしいものだ。

(評価:★1)

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