[コメント] マリア(2006/米)
この作品は、新約聖書でも神話的色彩の強い「ルカ福音書」を下敷きにしているようなので、イエスを救世主でなく思想家として評価する自分のような者には「だから何なの」としか言えたものではない。
作品自体の言わんとしているメッセージが、全く見えてこない作品である。
マリアはただの生娘であり、彼女をめとったヨセフはマリアを大きな包容力で包んではいるものの、彼らの間に宿るべき愛情は極めて淡白にしか描かれない。また、ヘロデ王や東方三博士も聖書に記された役割のみを演じている、薄っぺらな存在である。それゆえ、この物語は誰を中心に描かれているかが曖昧になっているのだ。
そんなことなら、もっとヨセフという望まれざる夫へのマリアの戸惑い、そしてそれが彼の深い愛情によって思慕へと変わってゆく様を、恋物語のように描くべきだったろうが、生憎ヴァチカン推薦の映画であることから、そうした人間臭い描写は極力排除される。それゆえ、デビュー以来の大役を掴んだケイシャ・キャッスル・ヒューズも宝の持ち腐れになってしまった。もっとも、もともとドラマ性の少ないイエス生誕直後のエピソードに波瀾万丈を期待する方が馬鹿なのだろうが。
とりあえず、日本ではヒットはしないだろう作品だし、そうなった方が不気味である。
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