[コメント] 女を忘れろ(1959/日)
照明が何より増して絶品だった。子供のような影なき小林と、深く業を抱えた南田洋子や安部徹の内面を彩る濃密な陰影。そして非常階段で小林を襲う制裁のシーンのアングルの素晴らしさ。カメラ姫田真佐久の仕事はここでも期待を裏切らなかった。
このあたりで子役からの完全なる脱皮を図った小林旭ではあったが、やはり屈託のない笑顔とやんちゃなすね顔しか印象に残らない彼は「原石」としか思えず、果たしてダイヤモンドかただの小石かはまだ判断できかねる様子であった。
それに較べれば、浅丘ルリ子がまぎれもない輝石であることは誰の目にも明らかだ。彼女の目力はこの段階であまりにも強く、芯の強さも台詞より滲み出る。彼女のスケールに気づかない監督たちにより、旭や裕次郎の引き立て役にしか使われなかった彼女のこの頃の雌伏は、日本映画界の失策ともとれるものだったことは認識されねばなるまい。
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