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[コメント] ナチュラルウーマン(2017/チリ=独=スペイン=米)

おのれの精神年齢を思い知らされた。ヒロインは強力すぎるマイノリティ・クイーンであり、仲間や近親者の助けなど頼らずに、ただひとり陰湿な敵に立ち向かう。今後こういうマイノリティ映画は雨後のタケノコのごとく乱立するだろうが、こと自分からすると今後が思い知らされる類のスーパーヒーロー映画と見た。対象者は俺ではない。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







判りやすいので『シェイプ・オブ・ウォーター』の例を挙げる。あれもマイノリティ映画だが、ヒロインは障碍者であり彼女の脇を固めるのがゲイと黒人である。舞台の時代もあっていかにも脆弱であり、かれらが健康的なアメリカ社会に立ち向かうためには、数々の手段や幸運すら必要になることだった。

だが、この映画のヒロインは自分だけで戦い続け、同じくマイノリティの隣人の力など頼ることもなく勝利をおさめる。彼女は第三の性の体現者ではなく、女として生きるが必要とあらばもともと男であった過去をも利用する(タクシーから他人を追い出す声、サウナの一件、恋人の家族の車を攻撃する力技!)モンスターを自任する存在なのだ。

こんな作品ともなれば、もはやマイノリティ映画を突き抜けたヒーロー映画の極北と思わされる。「痛快なる少数分子の逆襲」だ。だが、精神的にジジイである自分はこれを応援することは最後までできなかった。マイノリティとともに育った世代は快哉を叫べたのだろうが、こんな鋼のメンタルをもった人間に感情移入などできないのが自分たちジジイ世代だ。恐れずに言えば、恐怖の新人類出現、みたいなニュースに感じる危機感を抱いたのだ。永野護「変わることを恐れるのは老人だけだ」はい、おっしゃる通り。

(評価:★3)

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