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[コメント] 魔女の宅急便(1989/日)

少女が大人に成長する物語。愛すれば愛される。
ALOHA

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最初は睡魔に襲われ断念したが、2回目は成功した。 ジブリの作品で1回観ただけで感想文を書こうとするのははじめてだ。

魔女の宅急便』は宮崎駿(ジブリ)の最初のヒット作といわれる。 この作品は、宮崎駿にとって『となりのトトロ』の興行的失敗を挽回する作品として位置づけられた。 当初、宮崎駿はプロデューサだったのだが、いつの間にか脚本も監督も請け負うこととなったそうだ。

私がこれまで感想文を書いてきた宮崎駿作品とこの作品の大きな違いは、 『魔女の宅急便』の原作は宮崎駿ではない。ということだ。

宮崎駿が原作の作品とは、ラピュタ、トトロ、紅の豚、もののけ姫、千と千尋、ポニョ、風立ちぬ。どれも、宮崎駿ワールドの濃い作品ばかりだ。

魔女の宅急便』には黒猫が登場することから、クロネコヤマトの宅急便であるヤマト運輸が仕掛けた広告映画だと思われがちで、実際そのように記述しているサイトもあるが、実はこの題名も黒猫の登場も原作の通り。

ただし、「宅急便」が商標登録されていた事からヤマト運輸にスポンサーを依頼したもので、最初は乗り気でなかった担当者もクロネコが登場すると聞いてスポンサーを受けたのだという。

宮崎駿は脚本を担当することになった事で修正・加筆を繰り返し、原作者と揉めたらしい。上映時間も30分くらい延びたそうだ。

なぜ、ここまで感想をなかなか述べることなく、この作品の周辺事情を説明しているかというと、やはりこの作品は宮崎駿原作の作品とは少し違っていて、あまり厄介な分析を必要とせず、素直に楽しめる作品に仕上がっていると感じたからだ。 そのせいか他の宮崎駿作品にみられるような「都市伝説」も存在しないようだ。

宮崎駿の作品によく出てくる冥界の入り口の象徴である「トンネル」も、この作品には登場しない。 むしろ、この作品世界そのものが冥界と下界が一体化している。 なんといっても人間と魔女が共存している世界なのだから。

映画の冒頭シーン。箒で空を飛んでいるところに巨大な輸送機がやってくる。 飛行機好きの宮崎駿らしいシーンだ。 人類の英知を結集し、空を飛び、物資を大量に運ぶことができる飛行機と、 自分のチカラで空を飛び、パンを宅配することになる少女がすれ違う。 この対比が面白い。

この作品の魔女とは、魔法という特技を持っているかのように描かれる。 魔法は当たり前には使えず、修行を繰り返し、自分のものにしていかなければならない。 本当の魔女になるには13歳で独り立ちをし、自分で探した町で1年間の修行を行わなければならない。

原作者と何を揉めたかは知らないが、この作品は宮崎駿が少しづつ大人になっていく少女の成長を描いたものだ。

エンドロールで流れるユーミンの歌「やさしさに包まれたなら」がこの映画のコンセプトを簡潔に示してくれている。

小さい頃は神様がいて

不思議に夢をかなえてくれた

やさしい気持ちで目覚めた朝は

おとなになっても 奇蹟はおこるよ

(中略)

小さい頃は神様がいて

毎日愛を届けてくれた

心の奥にしまい忘れた

大切な箱 ひらくときは今

(以下略)

主人公キキは、今夜はキレイな満月が見えると知り、 修行に旅立つことを決意する。 立派な魔女になるぞ!と夢を持ち、意気込んでいた。 箒で空を飛ぶ魔法も練習の成果が現れていた。

ところがそんなキキにピンチが訪れる。 修行に選んだ素敵な町でいろいろな経験をしている時、突然、黒猫のジジと会話ができなくなってしまうのだ。 そして、箒で空を飛ぶこともできなくなってしまった。

町での経験が、キキを大人にしたからだ。

黒猫のジジと会話できるのは、キキだけ。 「二人(?)だけの世界」から卒業するときが来たのだ。

そして、迷っているときには目標が失われる。集中力も途切れる。 そんな時、魔法も効かなくなるのだろう。

朝、キキがトイレに行き、出ようとしたが、 パン屋の主人が出てきたので恥ずかしくて外に出られない。 というシーンがある。

このとき、キキは自分の体が少し大人になったことを知る。

修行のために家を出るとき、 ママからは「いつも笑顔でね」と声をかけられたが、 おばあさんの愛を受け入れられない同年代の娘を見るとイライラするし、 笑顔なんか作れない。 好きな男の子が、そんな娘を自分と同じように扱うなんて許せない。 笑顔なんか作れない。

小さい頃は、どうやって飛んでいたかなんか考えていなかった。 でも、大人になったら理屈が出てきた。

心優しいおばあさんや、仲良しになったトンボくんへの愛。

それが魔法を蘇らせた。

風にあおられた飛行船にトンボくんが最後までしがみついていたのは、 トンボくんの飛行船に対する気持ちが一番強かったからだ。

その気持ち! キキはどうしてもトンボくんを助けたかった。 いや、助けなければならなかった。

魔法を使う意味を理解した瞬間だ。

集中し、キキは再び空を飛ぶ!

私がアルファロメオが好きな理由。それは

「愛さないと愛されない」事を教えてくれたこと。

愛するということは、その人の神様になることです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus けにろん[*]

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