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[コメント] インソムニア(2002/米)

監督やプロデューサーの手腕以上に、アル・パチーノロビン・ウィリアムスの演技のせめぎ合いに着陸していたのは痛し痒し。タイトルのインソムニア(=不眠症)がそのまま演出のキーになっているところは直球過ぎて安直な印象も。
かける

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セーターにしみ出る血、マニキュアをされた足の爪を切る手……公開前のテレビスポットは、猟奇犯罪やサイコ・サスペンスを思わせるよくできたものだった。ロビン・ウィリアムスが悪役! という前情報と相まって、期待が高まる中で鑑賞……しかし、拍子抜けしてしまった、というのが率直な感想だった。

ウィル(アル・パチーノ)を最後まで振り回し続けることになる同僚の死。故意なのか? 事故なのか? その謎と疑惑も、不安の連鎖や謎を呼ぶ謎……といった緊迫感でストーリーを牽引するには今一つ力不足。

エリー(ヒラリー・スワンク)が卒論を引っぱり出してきたり、ウィルをハグしてヒップホルスターを確認する以前の問題として、射殺するそのときに、しっかりと予備の拳銃に持ち替えるところを画面で見せているのだから、行為そのものが故意である以上、あとからウィル本人に「わからない」と言わせても説得力は薄くなるしかない。

あるいはその「わからない」という気持ちが、後になって沸き起こってきた葛藤だったとしても、その迷いや葛藤がインソムニア=不眠症に引き起こされ(あるいは助長され)たものだ、という一本調子ではメリハリに乏しい。

経験者からしてみれば、不眠症そのものの表現はビデオドラッグのように秀逸で、彼が単なる寝不足ではないことを充分に伝えているものの、心理的クライシスの大半を占めるのが白夜による不眠症……という語り口には、どこか平板で物足りなさを感じた。

結果、映画はアル・パチーノとロビン・ウィリアムスの演技のぶつかり合いにシフトしていくより他なくなり、クリストファー・ノーランなりスティーブン・ソダーバーグのカラーがさほど感じられなくなってしまっているのは残念。

テレビスポットも、途中からアル・パチーノとロビン・ウィリアムス(そしてヒラリー・スワンク)が登場するものに切り替えられていた。それはおそらく、予告編としてはよりベターな差し換えなのだろう

名優の激突という骨組みは、クリストファー・ノーランによる心理劇を期待していた向きにはなんとも肩透かしだった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)プロキオン14[*]

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