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[コメント] パパってなに?(1997/仏=露)

パパが僕に教えてくれたこと。「喧嘩はヤられたらヤり返せ。それができなきゃ男になれないぞ」「ナイフを手にしたら刺せ。それが掟だ」。。。それと、ママが「女」だってこと。シプルの香り。観終わった後、しばらく呆然とした。左肩に彫った「脅し」が余りにも切ない。
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







サーニャは彼が嫌い。僕からママを盗ったから。ママは彼といると「女」になる。ドアに鍵を掛けて僕を部屋から締め出す。彼と出会うまでママはそんなじゃなかった。

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サーニャは彼が好き。僕に軍帽を被らせてくれた。喧嘩の仕方を教えてくれた。筋肉の固さを教えてくれた。左肩のタトゥの意味を教えてくれた。ママには内緒の秘密を僕に教えてくれた。降りられなくなったはしごから僕を助けてくれた。お風呂で身体を洗ってくれた。生まれて初めて僕に黒海を見せてくれた。シプルの香りを教えてくれた。

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彼と離れ離れになるとき、サーニャは叫んだ。

「パパ、パパ、行かないで。僕のパパ、行かないでっ。僕とママを見捨てないでっ!」

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その日以来、想像上のパパはいなくなった。代わりに彼を思い出した。サーニャは左肩に彼と同じタトゥを彫っていつか彼と再会できる日を信じてた。残ったのはママの時計と彼の拳銃。いつか彼は僕を迎えに来てくれる。。。

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サーニャは彼が好き、でも、嫌い。 彼は軍人なんかじゃなかった。泥棒だった。ママへのプレゼントも盗品。初めて出会った列車の泥棒騒ぎもきっと彼が犯人。ママのことを「列車で一発ヤっただけの女」って言った。

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この映画、サーニャの表情が秀逸。心の機微が見て取れる。「あなたのせいよ」トーリャが監獄に向かうときママはサーニャにそう言った。電柱に寄り添うサーニャの表情は忘れることができないな。。。

サーニャの行動も可愛い。ふてくされた時の変な蹴り。ガォーって虎の真似。ママを盗ったトーリャを嫌いながら、強さ・逞しさ・匂い・言葉で男を教えてくれた彼を慕い出す。男の子の葛藤。

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それ故にラストが切ない。再会できた喜び。落ちぶれて別の女のヒモになってた彼を見た時の寂しさ。僕を覚えてくれてなかった悲しみ。ママを侮辱した怒り。

小便漏らしながらも彼をヤらなきゃいけなかったのは、彼が「何回漏らしても最後に勝て」って僕に教えてくれたからだ。

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憧れは消滅した。 何もなかった。何も起こらなかった。何も。。何も。。。

何度観ても、やっぱり左肩に彫った「脅し」が余りにも切ない。。。

(評価:★5)

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