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[コメント] ミッドナイトスワン(2020/日)

トランスジェンダーに寄り添っているようでいて、実はとても冷たい作品だと感じた。一果の美しい肢体やバレエは全て醜い凪沙の身体やニューハーフショーのバレエもどきを嘲笑している対比のように思えた。片平先生から「お母さん」と呼ばれ喜ぶ凪沙、深夜の公園で「朝には白鳥に戻るお姫様たち」と呼ばれた際の凪沙と一果の表情が印象的。
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







トランスジェンダーに理解ある作品ならば、凪沙の手術を失敗させる必要はないし、ラストで凪沙を殺す必然性もない。

やはり本作はトランスジェンダーに「理解あるフリ」をしつつも、トランスジェンダーを「異質なもの」・「醜いもの」として(演出の域を超えて)表現している気がする。

(元々女性的な要素のない、どちらかと言えば男っぽい輪郭の草なぎ剛の起用などは演出の範疇だということは理解できるのだが......)

一方で、一果の実の母親・早織をわかりやすい悪役に仕立て上げ、観客を凪沙の味方につける巧みな誘導。

そのせいでラストが余計に物悲しくなるわけだけれど、トランスジェンダーに理解ある国・監督が制作していれば、原作とは異なってもラストはハッピーエンドにしようと思うのではないだろうか。

本作では小道具的な使われ方をした服部樹咲だが、第二の蒼井優的な稀有な存在になり得る逸材。

大切に育ててほしい。

余談だが、凪沙がホルモン注射を受けていた病院の医師がそろそろ性転換手術を考えた方がいいと急かすシーンがある。

患者の意思を尊重せずに治療方針を押し付けてくる医師は信用に値しない。

劇中でいちばん気に食わない登場人物が彼だ。

追記: 母性は実の母親でなくとも、子宮がなくても宿る、というテーマも考えてみたたが、その前提としてもやはり「トランスジェンダーでも」「男でも」という付帯条件がついてくるような気がして。

どう好意的に考えても、やはり冷たい映画という結論に至った。

実際のトランスジェンダーの知人数名には概ね好評。扱われ方はどうあれ、草なぎ剛という有名な俳優が演じてくれたお陰で、その存在の認知度が増したように思える、とのこと。

そういう意味では本作の持つ意味は僕が思うより大きいのかもしれない。

(評価:★4)

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