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[コメント] ビヨンド・サイレンス(1996/独)

親だからといって、子供の芽を摘む事が許されるのだろうか?
mimiうさぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私はどうしてもこの映画に共感できない。少女自体のララは本当にチャーミングで、参観日のシーンなんて抱きしめてやりたいほど可愛いい。

それに比べ、あの父はなんだ!

自分が不自由になるから、自分の側に置いておきたいから才能ある娘を手放さないだと?身勝手にも程がある!

大体このオヤジは、幼い頃からその気があった。誕生パーティで、自分が聞こえない音楽を皆が楽しんでいるのをぶち壊すなんて、我が侭過ぎるのではなかろうか。音楽は音を楽しむのだ。音が聞こえなければ、それを楽しむ人の表情を楽しむなど違った楽しみ方があるはずだ。

その点で比べると、『陽の当たる教室』の演出は素晴らしい。耳の聞こえない青年が一生懸命音楽を体で感じようとする姿が描かれていた。その真摯な気持に心打たれたのに、皆の仲間に入れないから暴れるというのはどういう事だ。

自分達のために残るという娘の手を引っ張って汽車に乗せるぐらいの「愛」を見せても良かったのではなかろうか?

父の愛は全く持って感じられなかった反面、伯母クラリッサのエピソードは素晴らしかった。親族の中でも秀でた音楽の才能を持つ自分をあっさりと姪が越してしまった時の、喜びと嫉妬。ララへの愛情と憎しみ。その狭間で揺れ動く姿がなんとも辛かった。姪の才能を伸ばしてやりたいと一番願っていたはずの自分が、いつの間にかそれを阻む立場になってしまい、それをララに指摘された時のクラリッサの表情がなんとも言えなかった。

かの平賀源内でさえ、弟子の能力に嫉妬した殺人だったという説が流れるくらいだから、師弟関係は口で言うほどたやすくない。それが痛いほど伝わってきた点では、いい映画だった。

(評価:★2)

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