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[コメント] 夢野久作の 少女地獄(1977/日)

湖か。白い風船のアップから引きながらフォーカスイン。小舟に2人の少女。続いて岸辺で風船を飛ばし合う2人の高速度撮影でクレジット。この風船と少女の画面は終盤まで度々出て来る大事なイメージとなる。
ゑぎ

 次に、高等女学校の門。レトロな車が止まっていて、昭和初期ぐらいの時代背景だと分かる。校長先生の桑山正一と部下の三谷昇、理事長だろう江角英明の関係が端的に示される。校内のクラスでは英語の授業。絵沢萌子が先生で、真面目に詩を朗読するのは面白い。先に書いておくと、本作の絵沢はセクシー担当ではない。生徒の中には、冒頭の小舟の2人、甘川さん−小川亜佐美と殿宮さん−飛鳥裕子もおり、2人は親友だと分かる。本作はこの2人のダブル主演と云っていい映画だと思うが、甘川−小川は変人で、生徒たち及び先生からも「火星人」もしくは「火星」と呼ばれてイジメられている。殿宮−飛鳥は理事長の娘で一目置かれており、いつも小川をかばっているというような関係だ。

 さて、本作の主な濡れ場を記載しておきます。まずは、殿宮理事長−江角が自邸に芸者の岡本麗を引っぱりこんで事に及ぶシーン。こゝは、別室で娘−飛鳥がピアノを練習しており、さらに寝室にいる病身の妻も喘ぎ声を聞いている、というシチュエーションだ。次に貸した傘を返しに来た小川を桑山校長が犯すシーン。この後、小川が海辺に出て、全裸で波に打たれ、砂まみれになって笑う演出はいいと思う。夜の青い海が綺麗で前田米造の撮影の見せ場だ。また、桑山校長には、芸者−桂たまきと同衾するシーンもある。飛鳥には、一人で腋毛を剃る場面で綺麗な胸を披露するショットなんかもあるが、三谷昇に校長の不正を密告させる条件で関係を結ぶ場面(飛鳥が三谷に「書記風情が」という科白がある)と、終盤で、乞食坊主でテキヤ−益富信孝との交接場面を父親の江角に見せつけるシーンが強烈だ。胸や太腿を撫でまわす手のアップがとても効果を上げるショットが多い。

 しかし、こういった場面以上に特筆すべきは、女学校内での謝恩会の豪華なエスタブリッシングショットの造型だとか、坂と路面電車、レンガ倉庫を背景に撮ったロングショット、あるいは海が見える墓地のショットもそうだが、俄かには信じられないようなゴージャスな画面作りだ。あるいは、風船と少女の画面以外にも教会や写真館を舞台にしたファンタジックな演出や猟奇趣味の部分だろう。その極めつけがラストシーケンスの唐突な火山の出現だ(桑山は火星だと云う)。

 全体に画面は綺麗だし、飛鳥を台車か何かに乗せてカメラの回りを回転させていると思しきショットなど、移動撮影も凝っているけれど、それらを帳消しにするぐらいズームインが多く、終盤の復讐シーケンスなどカメラワークが煩いと感じられる部分も多い。

(評価:★3)

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