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[コメント] 鏡獅子(1935/日)

菊五郎の舞については、やはり、何と云っても、獅子になってからの、振り毛(カツラ)を振り回す部分が圧巻の迫力だ。古い短いフィルムだが、今見ても大いに興奮する。画面造型含めて、完璧なものを見た、という感慨を覚える。
ゑぎ

 ファーストカットは興行名の書かれた提灯のカット。この後、歌舞伎座正面、劇場内、舞台の空ショットが続く。そこに、滔々とナレーションが入り、六代目菊五郎についての説明、彼を賛美する紹介が流れる。菊五郎の代表作の役柄をスチル写真で繋いだりもするし、楽屋で本を読む姿がローアングルで映し出されたりもする。この前半部の全き安定感は、矢張り、小津の刻印だと云いたくなる。

 幕が開いて、鏡獅子の演目を映したパートに入ると、主に3つの場所に設置されたカメラの映像が繋がれる。すなわち、劇場の2階席上手側、1階席の舞台中央、1階席上手側の3カ所だ。上手側の2台からはロングショットで、2階席からの映像は、当然だが俯瞰、舞台中央のカメラの構図はフルショットで、あおり気味になる。ただし、弥生(娘)として舞った菊五郎が舞台下手の花道に引かれて行き、はけたあと、獅子の精になって登場する場面だけは、下手の花道近くに置かれたカメラから撮られている。これらを組み合わせ、完璧なカッティング・イン・アクションで、舞う菊五郎を繋げている。この編集へのこだわりも、小津のものに違わないと思う。

(評価:★4)

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