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[コメント] 喜劇役者たち 九八とゲイブル(1978/日)

これも面白い!再評価すべき映画だろう。その面白さは、何と云っても初期のタモリの芸(というかネタ)に拠るところ大なのだが、
ゑぎ

 しかし、タモリのその何とも太々しいまでに物おじせず、堂々たる態度で極めてクダラナイことを映画としてやり通す演技・演出は、矢張り瀬川昌治のディレクションの賜物ではないだろうか。とにかく、圧倒的な狂気が宿っている。

 調べると、テレビ番組「空飛ぶモンティ・パイソン」への初出演が1976年ということなので、本作時点のタモリは、まだキワモノ扱いされていた頃だろう。4ヶ国語麻雀を久しぶりに見たが、やっぱり笑ってしまった。本作の主人公は間違いなく愛川欽也なのだが、相方になるタモリに完全に食われている。ただし、それは、プロット上の要請であり、演出意図でもあるという点が、この映画の懐深いところだ。ちゃんと意図が達成できていると云えると思う。

 さて、他の役者についても書き留めておこう。アバンタイトルはドサ回り中の愛川とタモリとの出会いのシーンだが、クレジット開けすぐに登場するのは場面が浅草に変わって、自転車に乗る秋野太作だ。こゝからしばらくは、彼のプロットになり、ほとんどもう一人の主役と云っていい役割が与えられている。秋野はストリップ小屋「モナコ座」の進行係り。支配人は南利明で、踊り子には東てる美あき竹城がいる。本作のあき竹城、めっちゃ綺麗で感激する。東てる美は脱がないし、イマイチ魅力的なシーンが無いのは残念だ。愛川は過去にモナコ座に出演するコメディアンだったが、一度お払い箱になり、ドサ回りに出た身。しかし、タモリを相方にして復活を期そうとする、というお話だ。ただし、愛川には結婚を約束している佐藤オリエがおり、彼女は足を洗って一緒に食堂(カレー屋)をやってほしいと思っているのだ。佐藤の出番はそれほど多くは無いが、彼女の位置づけは重要で、「コンビでも相方を食うぐらいでないと生き残れない」というテーマを示唆し続ける聡明なキャラなのだ。

 あと、タモリのキャラクターは正気なのか狂っているのか全く分からない人物としてラストまで一貫しているが、中でも最も常軌を逸した場面は、横山道代石井富子という2人の代議士と青少年風紀委員会の女性たちが小屋に押しかけて来るシーンで見せる、彼女らとのからみの場面だろう。何の脈略もなく、また、全く屈託なく、彼女らと悪口対決をしようとするタモリ。さらに、国歌斉唱!と云い「君が代」を唄うかと思うと、「月の法善寺横丁」のメロディに乗せ「君が代いっぽんサラシに巻いて〜」と来る。これには、出演者も皆戸惑っているようにさえ見えるのだ。この後の最終盤は、相変わらずのコマ落とし処理を入れたドタバタ劇だが、これを挿入することも、瀬川昌治の揺るぎない信念に思えてくるのだ。

#備忘でその他の配役等を記述します。

・アバンタイトルで愛川と一緒にドサ回りしているストリッパーは園佳也子。港町のストリップ小屋の支配人は笑福亭鶴光。園と鶴光はワンポイントだけ。

・刑事の橋本功。瀬川作品の彼らしい3枚目キャラ。秋野は、毎日見に来ている学生服姿の鈴木ヒロミツをバイトに雇う。客のなかには、三木のり平もいる。また、テレビプロデューサー役で湯原昌幸

・モナコ座専属の台本作家で財津一郎。おでん屋の親父で赤塚不二夫が出て来る。

(評価:★4)

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