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[コメント] 追われる男(1955/米)

理由なき反抗』と同年のニコラス・レイの西部劇。邦題から主人公のキャグニーが誰かから追われるプロットが出現するのだろうと思いながら見ていたが、そんな展開は無く、彼が悪役のボーグナインらを追う部分はあるが、タイトルにすべきとは思えず。変な邦題。
ゑぎ

 さて、冒頭、ジェームズ・キャグニーと若いジョン・デレクが出会う場面が、岩山と川と、山間の鉄道も取り入れた、高低を活かした良いロケーションなのだ。二人が列車強盗に間違われ、保安官から狙撃される場面も斜面の演出が決まっている。連行されたマディソンという町は、その背景に雪を頂いた山が見える。この画面も、「あゝ西部劇だ」という感興に打たれる。

 無実を信じてもらえたキャグニーとデレクは、ジーン・ハーショルトヴィヴェカ・リンドフォースの父娘がやっている農場にやっかいになる。狙撃され重傷を負った、デレクの看病シーンや、農場を手伝うキャグニーの場面が、短いカットのディゾルブで繋がれる演出も、とてもコギミ良いのだ。ただし、ガス・シリング演じる医者からは、もう二度と歩けるようにならないと云われていたデレクが、キャグニーの荒療治で、すぐに歩けるようになったり(跛行はしているが)、馬を乗りこなせたりするのは、ちょっと都合が良すぎて違和感はある。

 さて、キャグニーは町の人々から請われて保安官に就任するのだが、ヒロインのリンドフォースが保安官事務所に訪ねて来て、監房が並んでいる奥行きのある通路で二人キスするカットがある。これが、ちょっと他で見たことがないような、縦の空間を感じさせる不思議な雰囲気の画面になっていた。

 そして終盤は、銀行強盗たちをキャグニーが町の有志を率いて追う展開となるが、強盗が逃げた先はコマンチの土地で、町の人たちは怖じ気づき、キャグニーとデレク二人で追うことになる。こゝから、二人の関係が変化を見せ始めるのがポイントで、面白くなるかと期待させるが、クライマックスのアーネスト・ボーグナインとのガン・ファイトの演出が、ちょっと弱いのはイマイチな点か。

 また、いつも悪役の多いジャック・ランバートが、町の住民の役でずっと出ていて、何かにつけキャグニーに不満を持つ男ではあるのだが(酒場で対峙したりもする)、ラストまで、決定的な悪事を働くことなく、普通の人で終わるのは、肩透かしだった。

(評価:★3)

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