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[コメント] 牡牛座 レーニンの肖像(2001/露=日)

画面の特質はほとんどのカットがローキーで、尚且つ緑がかった、スモーキーな色調で統一されている。また、絶えず、誰かがドアから覗く、覗いては身を隠すを繰り返す。これは映画的だ。
ゑぎ

 あるいは、介護人の男たちは、主人公の病人を手荒に扱う。病人の手を叩いたりする。暴力的な映画なのだ。

 音使いで特徴的なのは、うなり声、うめき声、鼻唄のような声と、遠雷のような遠くから聞こえる音が鳴り続けている。

 舞台となる施設は、大きな柱が何本もある、白いカバードポーチが目立つ、立派な建築物だ。庭の東屋も同様に白い柱がある。資本家の持ち物だったのだろう。屋外シーンで印象深いのが、白い花が咲く草原のシーン。病人は妻と二人で寝転ぶ。この草原の中にも、監視者が隠れている。

 スターリンの訪問シーン。病人は杖をもらう。しかし、夕食時には、訪問者が誰だったかを忘れている。妻と妹に「グルジア人?ユダヤ人?」と聞き、女2人は笑う。もらった杖で、テーブルやピアノを叩き、暴れる回る。また、介護人たちから、手荒に扱われる。

 この施設にはカメラマンが存在するのだが、病人の妻と妹を撮ったりする。病人や、スターリンは撮らないのだ。何のためのカメラマンなのだろう。コメディパートなのか。批評性か(本作が、ソクーロフ自身が撮影担当であることの)。

 ラストは長いバストショット。微笑。そして空。雲とその向こうの微かな陽の光。これは明らかに、病人の見た目のカットなのだろう。即物的(病人の身の回り)ではないカットが初めて出現するので、このラストには驚きがある。

(評価:★4)

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