勿論、マーティン・スコセッシが最も多く組んだのがリチャードソンであり、タランティーノも彼を選び続けているという名手なのだから、例えば冒頭の、船が霧の中から現れるカットなんて鳥肌が立つような見事な照明なのだ。あるいは、美術装置のダンテ・フェレッティの造型も相まって、回想や幻想や夢を含めたフラッシュバックはどれもこれもとても面白い画面になっている。

　Ｃ病棟という重度患者の病棟で合うジャッキー・アール・ヘイリーといい、岸壁の穴の中にいる、パトリシア・クラークソンといい、出番の少ない配役に対しても最大限にインパクトを与えるディレクションは見応え充分で、スコセッシの力量がよく分かる映画になっている。終盤、謎解きのためにの説明描写が続く部分はテンションが下ってしまうが、これはこの手の映画の宿命か。