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[コメント] ザ・ロード(2009/米)

原作を先に読んでから見た。灰色、モノトーンのルックの統一は想像通りでこれは良いと思うのだが、CG処理の画面はそれとすぐ分かり、多分それもあって原作を読んだ時に自分で想像していた世界のほうが遥かに豊かで大きい、と思ってしまった。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 また映画では少し歩くと人と会う、という感覚を持ってしまったのだが、そういう映画の尺の制約というか構成上の制約でも世界が矮小化されてしまっている。ただ、自分たち以外の人間全員が悪人かも知れないという恐怖と猜疑心は丹念に描かれており、この恐怖感創出には成功している。例えば父親ヴィゴ・モーテンセンは誰かに「後を追われる」ことに怯えており、弓矢を放った男の傍にいた女も「後を追ってきたのか」とこだわっていたりする部分が忘れがたく印象に残る。また、ガイ・ピアースが「Good guy」なのかどうか分らないルックスに演出されている部分などは見終わった後も落ち着かない複雑な感興を覚える。複雑さということでは、ピアースと一緒にいる女・モリー・パーカーが「心配して後を追ってきた」と云うのもアイロニカルなオチと受け取るべきなのか、それともこの発言自体が真実なのか。(そもそも少年の聖性のメタファーは揺るぎないレベルだと思われることから、正解は「真実」ということに、そしてピアースは正真正銘のGood guyなのだろう。)

 もう一つ原作と比べた話になって恐縮だが、映画では母親・シャーリーズ・セロンのフラッシュバックがかなり多い。それぞれ艶のある画面だし、仕方が無いという気もするが、反面とびっきりのワンシーンだけの登場(『家族の肖像』のドミニク・サンダみたいな)であって欲しかったとも思う。そして渓流の鱒。鱒を見せるか見せないか、どちらの選択だろうとずっと思いながら見ていたのだがこれはこれで良い。鱒を見せるとエンディングのこの複雑さが台無しになる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)赤い戦車 Orpheus

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