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[コメント] オリヴァ・ツイスト(1948/英)

冒頭導入部、オリヴァの母親(まだ妊婦)が救貧院へ駈けこむまでの描写は、出色の出来。すなわち、雲、雷、木と水辺、丘の上、斜面のロングショットに女性が出現する。
ゑぎ

 雨が降り出し走る女。妊婦だと分かる。丘の上の屋敷へ。門扉。見事な力のあるオープニングだ。舞台がロンドンへ移ってからも、その街並み、フェイギンのアジトへ続く階段の造型、建物と建物を繋ぐ通路の俯瞰など、美術装置と撮影は素晴らしく見応えがある。もちろん画面の品質については、全体をまとめたリーンを賞賛すべきだろう。

 ただし、プロット展開やキャラ造型については、性急さ、あるいは中途半端さが感じられてしまう。やっぱり、ダイジェスト版的な物足りなさがある。例えば、アレック・ギネスのフェイギンは、まあまあしっかり描かれていると思うのだが(すっごいメイクでギネスとは分からないが)、ドジャーもサイクスもナンシーも魅力に欠けるのだ。魅力あるプロットが足りないと云ってもいい。もちろん、オリヴァの出生の謎についての見せ方が、イマイチ不明確な点も指摘できるが、この点は私はあまり気にしない。

 あと、撮影では、人物2人を縦(前後)に並べて、ディープフォーカスで撮ったカットが目立つ。葬儀屋のシーンでも、フェイギンのアジトでも。これにより猥雑さ、品の無さが強調されていると思う。また、終盤の、ピーター・ブルが出てくる酒場の場面(ナンシーがフェイギンとモンクスの相談を窃視する場面)の濃密な描写は特筆すべきだろう。

#備忘で、その他配役等について記述。

・救貧院のバンブル氏はフランシス・L・サリヴァン。クーニイ婦人はメアリー・クレア。中盤の二人の喧嘩シーンがいい。

・葬儀屋の若い小間使いは、16歳ぐらいのダイアナ・ドースだ。

・サイクスはロバート・ニュートン、ドジャーはアンソニー・ニューリー。ナンシー役のケイ・ウォルシュは、当時、デヴィッド・リーン夫人。

・ドジャーたちが書店でスリをはたらく相手は、ヘンリー・スティーヴンソン。バンブル氏やフェイギンに接触し暗躍するモンクスは、ラルフ・トルーマン。酒場のシーンで登場するピーター・ブルは『博士の異常な愛情』のソ連大使。

(評価:★3)

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