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[コメント] 眠れる美女(2012/伊=仏)

尊厳死の是非を巡る事件をからめた3つの話が描かれるが、殆どこの社会的なテーマについて真面目に描こうという気はないと思われる。ではその代わりに何があるのか。それは抜群に面白いプロットでありキャラクターであり画面と音なのだ。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「面白い」と単純に記したが、面白さは唐突な運動であったり、ドキリとするような音のメリハリ(ユペールの叫び声!)であったりするし、複雑な感情の機微や日常の(映画の日常の)ちょっとした既成概念の呪縛からの解放(大げさな云いようだが)であったりする。また、それらを一瞬のうちに観客に納得させてしまう。例えばユペールの夫、息子、娘の関係性はどうだろう。非常に複雑だし、こんな関係性がかつて映画で描かれたことがあるだろうか、と思わせるのだが、しかし同時にほんの少しの描写で観客は理解することができる。国会議員・トニ・セルヴィッロ の娘マリアが出会う兄弟と母親なんかもそうだ。

 タイトルロール−「眠れる美女」に該当する登場人物は複数人出てくる。トップシーンで教会のベンチに眠る美女マヤ・サンサ。植物状態のユペールの娘。国会議員の娘マリアもホテルで朝寝坊してしまう。マリアの母(国会議員の妻)も加えることができるだろう。「眠れる」という言葉を「現実が見えていない」や「正気でない」という比喩にとらえるのなら、ユペールもそうだと云えるかもしれない。ただ、この中で真のタイトルロールは矢張りトップシーンとラストシーンをつかさどるマヤ・サンサだ。ユペールも怪演だが、何よりマヤ・サンサが素晴らしい。彼女がこの映画に「希望」をもたらしている。

(評価:★4)

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