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[コメント] 太陽の爪あと(1966/英)

これは見応えのあるサスペンス映画だ。ラヴクラフト(+ダーレス)の雰囲気は殆ど残っていない(原作は未読なので、原作に忠実なのかどうかもわからないのだが)。海辺の、奇妙な習俗が残る、都会から隔離されたような村を舞台とするが、クトゥルフ的なものは登場しない。
ゑぎ

 もっと海を禍々しく描いてれば、かなり違ったろうとも思うが、これはこれで、主観ショットや、建物の高低を使った縦横無尽な視点転換を駆使し、よく見せてくれている。恐怖の舞台となる製粉所のある古い建物がとてもいい。本作もある意味、建物が主役と云っていいかもしれない。そういう映画の系譜の証左として、『レベッカ』や『ジェーン・エア』と同じ帰結をむかえるのだ。

 また、役者で見ると、この人が出ている映画なら、見てみたいと思える俳優が4人出演しており、キワモノっぽい映画にしては、なかなか豪華版だ。ヒロインはキャロル・リンレーで、この頃が一番美しかった頃ではなかろうか、劇中でも美人美人と云われるが、まったく首肯しながら見ることができる。その夫役がギグ・ヤング。これが強くて頼りがいがあって良い役なのだ。この夫婦にからみ、嫌がらせをする、村の不良たちの首領格を、オリヴァー・リードが演じている。ほゞ『呪われた者たち』のときと同じようなキャラクターだが、こういう役がよく合っている。そして、謎の鍵を握る、リンレーの叔母役がフローラ・ロブソン。相変わらずの存在感。彼女がいることで映画全体が締まるのだ。

 尚、本作の冒頭アバンタイトル開けのタイトルバックが、リンレーのカメラ目線アップカットで、ディゾルブというか二重露光を繰り返して行われるので顔が揺れて見える、という凝ったもので、これは映画の帰結の暗喩でもあるのだが、ちょっと印象に残る良いタイトルバックだ。

(評価:★3)

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