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[コメント] 愛を綴る女(2016/仏=ベルギー)

これは傑作。走るコティヤール。水に浸かるコティヤール。この2つのモチーフを何度も反復する。
ゑぎ

特に、アルプスの療養所の場面で、屋外(山道)を走るカットから、放水療法(?)で水をかけられるカットに繋ぐカッティングは、象徴的過ぎて、思わず笑ってしまったぐらいだ。他にも、ジョゼ(マリオン・コティヤールの夫)が、自動車の中で息子の手を自分の肩に当てる所作の演出と、オートバイでコティヤールと二人乗りした際に、コティヤールの手を自分の腰に持っていく演出の相似。あるいは、ハンカチの刺繍、キリストの磔刑の像、チャイコフスキーのピアノ曲の反復等、観客に豊かなイメージの連関を省察させる部分が多い、豊かな映画だ。

 画面的な見せ場で特筆すべきは、何と云っても、アルプスの療養所の空間描写だろう。山側から建物の上階へつないだ渡り廊下等、建物として実に面白いのだ。こゝで登場するルイ・ガレルの病人メイクもいい。本当にしんどそう。この痛々しさが、再登場時の変貌ぶりに効いてくる。ガレルとコティヤールの濡れ場の演出もいいと思うが、ボカシが大きいのは気になった。

 あと、ピアノを弾くコティヤールから、パンニングで屋内を移動している間に、別の衣装を着たコティヤールが現れ、さらにピアノの弾き手を成長した息子に切り替えるという、数年の時間経過を表現したワンカット2シーンの複雑な演出も特筆すべきだ。

(評価:★4)

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