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[コメント] フィラデルフィア物語(1940/米)

これ程巧妙に観客の興味をはぐらかせ、かつ全体として破綻無く収拾してしまう映画はちょっと他に思いつかないくらいだ。強いて云えばホークスの『三つ数えろ』と同じぐらいの奇跡的なプロット展開。
ゑぎ

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 ジョージ・キューカーの、いやハリウッド製ロマンチック・コメディの最高峰と目される映画だが、キューカーであれば、あまり人口に膾炙しない『素晴らしき休日』の方が実は出来が良いと私は思う。勿論『フィラデルフィア物語』もキューカー+セドリック・ギボンズ(美術)+ジョゼフ・ルッテンバーグ(撮影)という黄金トリオによるMGMの粋と云うべき技術的完成度だが、『素晴らしき休日』のストレートさの方が私には好み。

 さて、この映画は非常に込み入ったプロット構成を持った映画で、これ程巧妙に観客の興味をはぐらかせ、かつ全体として破綻無く収拾してしまう映画はちょっと他に思いつかないくらいだ。強いて云えばホークスの『三つ数えろ』と同じぐらいの奇跡的なプロット展開。見ているときの心理状態としては、込み入ったプロットがどう収まりつくか想像もつかず、オロオロしてしまう。それはラストカット直前まで続く。

 また、ジョージ・キューカーという監督は何でもない普通の空間、それは都市の舗道であったり、悄然としたアパートの部屋であったり、決して大自然を舞台にした絵画的空間ではない普通の空間を、もうこちらの想像を遙かに凌駕した形の完璧な構図で切り取る人で、この映画でもフレーミングの素晴らしさは驚異的だ。ジェームズ・スチュワートが邸宅の中を物色して歩く各カットのオフ・スクリーンを意識させる構図等々。

 キャサリン・ヘプバーンケイリー・グラントジェームズ・スチュワートという最強の配役によるコラボレーションは当然魅力溢れるものだが、ヘップバーンと共に四角関係、五角関係のキーとなるルース・ハッセイが、とても鮮やかな印象を残す。

(評価:★5)

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