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[コメント] くじらびと(2021/日)

本作のドローン撮影は確かに凄い。こういうことが出来るのだから、この技術革新は、やっぱり素晴らしいと、私とて思う。
ゑぎ

 しかし、舟上のカメラから、鯨めがけてジャンプするラマファ(銛打ち)をとらえたスローモーションだって、素晴らしいはずで、ドローンによる俯瞰ロングショット以上に大迫力かも知れない。それが無いのは残念に感じる。天邪鬼の無い物ねだりかも知れないが、私はそう感じるのだ。あと、本作の凄いところは、上空からのカットに続いて、海中の視点が繋がれるところだ。この視点移動には興奮する。さらに、撮影同様に音響が凄いと思う。全てが現場での録音ではないのだろうと思うが、この音の響きには、心が奮える。

 尚、手持ちカメラでのズーミングは、多くは手動操作だろうか。カクカクした動きなのだ。これも撮影の好みか。オートズームをなぜか嫌う姿勢。また、ありきたりなカッティングも気になる。鯨漁成功の後の、歓喜の表現なのだろう、星空の微速度撮影の挿入など。

 登場人物では、主人公的な扱いと云える、初めて舟での漁に参加する少年、エーメンの家族と、マンタ漁で死ぬ青年、ベンジャミンの家族が主に取り上げられる。エーメンの名前が紹介された時点で、彼らがクリスチャンなのだと分かる。エーメンの妹、イナが可愛い。エーメンの成長があまり描かれないのは、映画としてちょっと弱い。対して、ベンジャミンの父親イグナシウスが、もう一人の息子(ベンジャミンの兄、デモ)に舟づくりを伝授するという展開は、矢張り映画として締まる。舟作りと共に、ロープ作りという労働の場面もいい。

 ラスト近く、鯨が横たわる浜辺のロングショットで犬が走る。これはいいカットだ、こゝでエンドだろう、と思っていると、鯨の目のアップから、ドローン上昇移動で大俯瞰ロングショットとなるカットが繋がれる。こういうのは、ドローンを嬉しがって使っているように見えて、ちょっとイヤ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペンクロフ[*]

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