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[コメント] 犬王(2021/日)

傑作。古川日出男の原作は既読。単行本刊行まもなく読んだ。当時の読書メモには「異貌の能楽師・犬王と盲目の琵琶法師・友魚(友一、友有)の友情の物語。犬王の穢れとその呪縛からの解放についてのイマジネーションはちょっと凄い」と書いている。
ゑぎ

 この映画化版にも、原作のストロングポイントが、しっかりと踏襲されているが、いやはや、なんという独創性の追加だろう。見事なロック・ミュージカルとして映画化されているのだ。

 まずは、京の橋(三条大橋か)の上での友一−森山未來の歌唱に始まり、六条河原における犬王−アヴちゃんのお披露目公演、続く清水寺での、でっかい鯨のプロジェクションマッピングのような投影を背景にした歌唱シーンで瞠目する。こゝはホントに映像表現として見たことのないものだと思う。そして足利義満−柄本佑の前で披露される死を賭した一世一代の晴れ舞台。日蝕の表現と池の上での宙吊りの浮遊感。日のかげりは、友魚が壇ノ浦で盲いる場面と呼応する。これらミュージカル場面はまったく圧倒的な造型だ。

 また、紫色の眼窩がグルグルの面だとか、平家の亡霊を示す赤い光だとか、その他多くの背景含めて、ずいぶんとシンプルに戯画化された作画であることも、本作の力強さに繋がっていると思う。終盤の賀茂の河原での斬首シーンにおける無音処理も鮮やかで、心震えたが、それだけに、エピローグ、600年後の場面は、少々取ってつけたような感覚も残った。

(評価:★4)

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