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[コメント] アムステルダム(2022/米)

本作も全般にとても面白い映画だ。何度か涙目になるぐらい心揺さぶられる場面がある。ただしそれは、私の場合、ほとんど美しい画面に心揺さぶられたのである。
ゑぎ

 本作のエマニュエル・ルベツキ、カメラワークは奇をてらわないが(例えば長回しはほゞ無いが)、色遣いは抜群に美しい。特に淡い色彩、例えば、アムステルダムの部屋のシーンのピンク色のカーテンなど。あるいは、窓などからの外光の取り入れが、これ見よがしじゃないのもいい。やっぱり一流の撮影者だと再認識した。

 また、本作は「顔」の映画だ。それは顔のパッチワークの映画、という意味や、眼球の映画であるということも指しており、別の見方をすると顔を中心とした傷跡の映画とも云えるのだが、マーゴット・ロビーの制作物の成果も顔を意識させる物が多いし、ジョン・デヴィッド・ワシントンの端正な斜め顔のショットなど登場人物の顔ショット、あるいは、ラミ・マレックアニャ・テイラー=ジョイの眼球(目の演技)にも注目してしまう、というようなことも含めて言及しているのだ。このような画面の細部の風合い、テイストがとても楽しい映画だと思う。

 さて、ただし、後半の話の運びの停滞についても指摘しておいた方がよいだろう。それは、ほゞロバート・デ・ニーロが登場した以降ぐらいからだと感じた。もっとも、デ・ニーロ自体は、押し出しも良く、存在感も申し分ないが、彼が登場してからの演出において、会話シーンで話を進めることが多くなり、画面のテンポが悪くなったと感じたのだ。自邸のシーンもそうだし、戦友会の後の、真相を種明かしする場面も動きのない演出だ。

 私がもっとも気に入ったシーンも書いておこう。それは、クリスチャン・ベイルの病院の場面で、刑事二人−マティアス・スーナールツアレッサンドロ・ニヴォラが、ドア外に待たされ、診察室内で、ベイルがゾーイ・サルダナの腕の骨折を治療するシーンだ。唐突にベイルの妻−アンドレア・ライズボローが現れてビンタする。この場面の、意外性のある人物の出入りの演出が好きだ。

 あと、私の趣味の問題かも知れないが、マーゴット・ロビー以上にゾーイ・サルダナが魅力的だと思った。それと、テイラー・スウィフトが完全に脇役として扱われていて驚いた。勿体ないと云うよりも贅沢過ぎる。

(評価:★3)

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