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[コメント] 窓辺にて(2022/日)

窓辺は、沢山出てくるが、次の3カ所が重要だと思う。一つ目は冒頭とラストに稲垣吾郎が小説「ラ・フランス」を読んでいる喫茶店。次に、最初に玉城ティナに呼び出される(フルーツパフェを食べる)カフェ。
ゑぎ

 そして三つ目は、玉城の伯父さん−斉藤陽一郎のコテージの3カ所だ。あと、玉城が朝、窓を開けるホテルの部屋もあるか。何を基準に重要と云っているかというと、四宮秀俊秋山恵二郎による画面の美しさを重視して、云っています。特に、冒頭とラストの窓辺における「光の指環」、玉城と二人の窓辺での外光の取入れ、そして、コテージの場面では、夕景の中、人物を3人縦(前後)に並べたディープフォーカスでの光の扱い。また、窓辺以外でも、全編に亘って、屋内シーンの電球色の光は極めて美しい。

 構図の特色で云うと、複数人物(多くは2人。たまに3人)をフルショットかそれ以上に引いた固定ショットが多い。しかし、しばらく会話を続けていると、絶妙なタイミングで、カットを換えて、ウエストショットレベルで切り返すのだ。ただし、若葉竜也のホテルの場面や、中村ゆりの同様の場面では、被写体の動きに合わせて、ゆっくりパンするショットもある。

 また、例えば、序盤に稲垣と若葉が寿司屋で並んで座っているのを2ショットの切り返しで見せる演出があるが、こゝは微妙にフォーカスをどちらかへ合わせたショットになっている。でも上で書いたように、人物を縦に並べたディープフォーカスのショットもあり、これはディープフォーカスの場面の方が、キャラの(あるいは作劇の)迫真に迫る場面で選択されているように思う。稲垣が中村に、自分の「ショックの話」を打ち明ける場面もそうだろう。部屋の中で稲垣を左手前に、中村を右奥に配置した固定のシーケンスショット。こゝは、かなりの長回しで、切り返さないのだ(ショットの途中で中村が手前にやってくることで動きをつけるが)。

 ちょっと気になった部分も書いておく。稲垣が自分の「ショックの話」をまず若葉と志田未来に相談する場面で、画面手前に、若葉たちの娘を置いたショットは、わざとらしいと思った。しかし、こゝで、志田が怒り始めるのはいい。さらに、今度は志田が、稲垣と中村に相談する、という展開も良く、このまゝでも面白かったのだが、稲垣と中村のリアクションの工夫で、もっと面白くなるのかと期待したのだ。また、本作は最初に書いた通り、美しい画面の映画だが、私は、『ドライブ・マイ・カー』における、夜の車中の切り返しのような、あっと驚くほどの美しい撮影を期待しながら見ていたので、そこまでの画面はないと思った。比較することもないのだが、二つの映画には一部同様のシチュエーションがあり、撮影者も同一ということで、私はどうしても思い出してしまったのです。勿論、二つの映画には、また別の豊かさがあると思うし、本作は『街の上で』と同じぐらい良く出来た作品だと思う。

#備忘。猫の名前、ヨコヅナ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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