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[コメント] レッド・ロケット(2021/米)

ファーストカットは何の模様だろうと思っていたら、バスの座席の背もたれのアップだ。ズームアウトして寝ているマイキー−サイモン・レックスを見せる。こゝで既に笑ってしまう。BGMもあいまって、とても愉快になるオープニング。
ゑぎ

 だだっ広い土地に、ポツンポツンと家屋や飲食店なんかがあるロケーション。後景には、製油工場の施設、炎をあげる煙突が見える。全編、シネスコを意識させる構図の連続、というのも構図フェチにはたまらないポイントだ。ロードサイドを横移動で見せるショットが顕著だが、例えば、マイキーとレクシー−ブリー・エルロッドが家の裏のフェンスのところ(レクシーの元カレの白い車の前)で会話するような何でもないシーンの構図においても、とても快いのだ。二人を画面右側に配置し、画面奥に製油施設の煙突が見えているショット。

 また、これはプリプロダクションにおける設計だと思うが、星条旗模様のシガレットペーパーが何度も出て来る(愛国者だから、と云うのがいい)。星条旗は、ラスト近くにも、確か全裸疾走ショットの後景でワンカット映ったと思う。これはなかなかの皮肉だろう。それに、ヒロインのストロベリー−スザンナ・サンが勤める「ドーナツホール」というドーナツ屋の商品で、ホールは繰り抜いた部分だから、というのも逆説的かつ象徴的でもあり、非常にアイロニカルだと思った。

 あと、ファーストカットのズーム使用について上で書いたけれど、全編に亘って随所でズームイン、ズームアウトを使う映画だ。ストロベリーの家の裏の海辺で、マイキーが彼女の脚を持ち上げているショットでの急激なズームアウト、あるいは、ラスト近くのレクシーが「ポン引き(pimp)」と云う口元へのズームイン。これらが特徴的だが、意図のはっきりしたズームの利用だと思う。ズーム嫌いの私でも、これなら許せる。どうせズームを使うなら、こういう風に使ってほしい、という使い方なのだ。

#ストロベリー−スザンナ・サンのピアノの弾き語りが、なかなか上手くて驚く。マイキーも驚いているのがいい。

#タイトルの意味については劇中では触れられない。見終わって調べると、犬の陰茎のことのようだ。ストロベリー(イチゴ)のことかと思いながら見ていた。

#脇役だと、隣人ロニー役のイーサン・ダルボーネと麻薬の元締めの娘ジューンを演じるブリトニー・ロドリゲスに注目する。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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