[コメント] ラブ・レター(1945/米)
あゝウィリアム・ディターレ!本作もオーソン・ウェルズを想起させる画面造形が多々ある。屋内のセットは必ず天井が映っている。また、縦構図で、かなりのディープフォーカス、という画面も多い。
特に屋内の二人の人物を縦構図で収めるショットが目立つ。コットンとアン・リチャーズ。コットンとジェニファー・ジョーンズ。屋内からドア外の郵便配達人を捉えたカットなど。しかし、ワイラーのような、これ見よがしな、キャッチし過ぎるようなディープ・フォーカスではないところがいい。人物のカッティング・オン・アクションもほとんど完璧。
本作の3年後に、同じディターレ、ジェニファー・ジョーンズ、ジョゼフ・コットンが揃った『ジェニイの肖像』があり、どちらかと云えば、本作よりも『ジェニイの肖像』の方が名高い感があるが、いや、ストレートなメロドラマとしての本作の素晴らしさの方に軍配を上げたくなる。とにかく、ジェニファー・ジョーンズの美しさ自体に素直に感動できるし、同時に作り物のイノセンスをこれでもかと発散させるジョーンズの複雑さにも感心することしきりなのだ。常に険しい表情しか見せないが、その表情の下に優しさをにじませるグラディス・クーパーにも心ゆすぶられる。
さて、あまり映画的な話ではなくて恐縮だが、作家アイン・ランドの数少ない脚本家の仕事としても興味深い。『摩天楼』(The Fountainhead、1949)と比べると、突出感のない、メロドラマのように思えるが、しかし、これもまたアイン・ランドらしい、超個人主義的かつロマンチックなお話と云えるだろう。
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