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[コメント] ある人質 生還までの398日(2019/デンマーク=スウェーデン=ノルウェー)

冒頭は、フォーカスが外れた画面に青い光と白い光のカット。フォーカスインというか、人々がカメラに近づいて来て、体育館でのアスリートたちの入場行進だと分かる。主人公がトップアスリート(体操選手)だ、ということを簡潔に示す。
ゑぎ

 彼が写真家に転進してからも、フォーカスの演出がいくつかあるので、矢張りカメラの存在を意識させる。ところが、拉致、監禁されてすぐに眼鏡を踏み潰されると、彼は焦点を失ったはずだが、以降少なくも彼の見た目でのフォーカスの演出は出現しない。彼は写真家ではなくなってしまうのだ。代わりに、体操選手だったことが、度々画面に影響を与える。

 また、交渉人のアトゥーアがカッコいいなぁと思いながら見ていたのだが、見終わってから知りましたが、この人が監督(共同監督)でもあったのですね。この交渉人が、主人公と同時に、米人ジェームズ・フォーリーの捜索も請け負っており、このフォーリーの存在、描き方がとても効いている。それは、監禁場所で主人公に与える影響、という部分でもそうだが、本作のプロットと画面に映画らしさを与えていくのだ。例えば、アトゥーアが、フォーリーの居場所を突き止めた、すぐ次のカットで、ヘリ3台が砂漠を飛ぶ、といった演出に繋がる。ついでに云うと、このヘリでの突入場面は、あっさりロングのワンカットのみで処理される、この簡潔さもいい。

 さて、主人公が生還して(トルコ国境に入って)すぐに、眼鏡を渡される、というのもいい演出ですね。家族を代表して迎えに行ったのが姉、というのもいい(実話なんでしょうけど)。あと、映画全体を通じて、米人フォーリーがとても魅力的に描かれており、彼を主人公にした映画が見たい、とも思ったが、本作のような扱いの方が良いのかもしれないとも思う。あるいは、日本で後藤健二氏を主人公にした映画を作ることができるだろうか。

(評価:★3)

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