コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ゴールデンカムイ(2023/日)

原作及びアニメ過去作は一切未読未見でこの映画を見る。そのこと自体は(私に関しては)全く問題ないと思った。開巻は二百三高地の空撮俯瞰を模したショット。死体の上を低空飛行するかのような(昆虫の視点のような)ショットも面白い。
ゑぎ

 塹壕の中の主人公、杉元−山崎賢人が蟻を口に入れ吐き捨てる。カッコいいオープニング。戦闘シーンのアクション演出もキレがある。

 雪の地面の大俯瞰に人の影。舞台は北海道に移り、マキタスポーツとのやりとりになるが、会話シーンのショット繋ぎは途端にぎこちなくなる。ただし、山崎の杉元、相変わらず面構えは映画的で素敵だし、何よりも口跡がカッコいいと思う。また、ヒロインのアシリパ−山田杏奈は登場シーンから鮮烈な造型だ。全編通じて、山崎と同等かそれ以上と云ってもいいぐらいの存在感だ。衣裳含めて、綺麗過ぎるのが違和感があったが(汚れていないという意味)、これこそが、映画的現実だろう。とにかく彼女のアップの顔演技が(変顔含めて)本作のもう一つの見どころだ。コタンの場面の後、山田がしばらく消える場面が続くと、早く出てきて欲しいと希求するぐらいだった。

 その他の脇役についても少し書いておくと、本作においても矢本悠馬の活躍は特筆すべきだと思う。川へ落ちて凍えた山崎と矢本が火を起こすために銃弾を探すシーン、あるいは窓の鉄格子のすり抜けシーンなど、彼がいるから、取ってつけたような転調がコメディパートとして成立していると感じる。あと、額に四角いコブのある牛山を演じる勝矢の面白さも明記しておきたい。こちらは矢本よりも小さな役だが、強さが上手く出せている。あと、もう一人上げるなら、二階堂兄弟−柳俊太郎の気持ち悪さもすこぶる印象に残る(普通なら玉木宏を書くべきだろうが、これは予想の範囲内ということで割愛する)。

 そして、アクション場面ということでは、冒頭の戦闘描写には瞠目したし、眞栄田郷敦との闘い、特に転落シーンの造型なんかはいいと思ったが、本作のクライマックスと云っても過言でない馬橇を使ったアクションシーンはスピード感がイマイチに感じた。もっとハラハラさせて欲しい。あと、CG活用という点で、ヒグマと白オオカミのCGのクオリティはどうだろう。私は、ハリウッドにはまだ遠いという感覚も持ったが、正直なところ、日本映画としては驚くレベルだとも思った(って、この云い方は失礼でよろしくないが)。このからみだと、ヒグマの穴からのミタメショットでヒグマの殺戮を見せる演出は特筆すべきと思う。

 あと、映画としては、本作もフラッシュバック、回想の画面化が多過ぎると思う。つまり、説明が過多、分かりやすく作り過ぎだ。例えばアシリパの父親がクマの穴に入るショットなんて要らないし(この人の画面化なんてしない方がいいだろう)、杉元の過去の挿入はベタベタのメロドラマじゃないか。メロドラマが悪いということではないが、私の感覚だと、杉元のカッコ良さの造型に対してノイズ(逆効果)に感じるということだ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。