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[コメント] 不良少年(1961/日)

アバンタイトルは街中。若者たち。歩く女性を映しながら品定めのような会話をするオフの女性たちの声。銀座か?と思っていると、モノローグで「オレは銀座を歩いたことがない。護送車の中から見ただけだ」という声が入る。
ゑぎ

 しかし、中盤のフラッシュバックで、銀座の宝石店襲撃シーンが入るのはちょっと矛盾に感じる(もちろん、映画において、この程度の矛盾なんて大したことじゃないが)。ズームインで走る護送車に寄るショット。護送車の俯瞰を繋げる。少年たちの降車。手の縄。主人公はヒロシ。

 本作が手持ちやズームの多用で、いわゆるドキュメンタリー・タッチなのは予想していたことだが、抒情的なディゾルブの頻出と、フラッシュバックがこれほど使われていることは予想外だった。さらに、テクニカルな特徴として、全編に亘って会話はアフレコ、しかも、口と全く合っていなことを良しとする潔いアフレコの演出がなされていることだ。これにより、登場人物を自由に動き回らせ、科白もアドリブを(多分積極的に)採用しているのだろう。ただし、こういう演出は、ワタクシ的には、どうしても未整理な感覚が残る。

 本作の良さとして、まずは主人公ヒロシの面構えの太々しさを上げるべきだと思うが、少年院の中で一番の友人となる出張(でばり)の存在感も突出している。ヒロシがクリーニング科のボスと対決している際、助勢に現れる出張のカッコ良さ(しかしこのシーンはちょっと長いが)。あるいは、出張が一人監房の中で綿みたいな物を撚って煙草を作り、火を起こして喫う場面は、こゝだけ浮いてしまっているぐらい印象に残る。

 また、刑務所モノなので(本作では少年院だが)、当然ながら、鉄柵越しの監房のショットや扉の覗き窓からのショットといった窃視の視点が目立つのだが、ラストは院の鉄柵の扉越しに院外を撮ったショットだ。カメラは院内に残っている視点。ありがとうございました!と大きな声で挨拶をする、立派に更生した感を醸し出す演出もあるが、同時に、この後のヒロシの前途多難も思わせる。

#備忘

・クレジットの監督補の項で土本典昭の名前がある。

武満徹の劇伴では、回想シーンにかかる感傷的なワルツ曲がいい。

・舞台の少年院は久里浜とのこと。少年院の側には海と小さな灯台がある。

(評価:★3)

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