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[コメント] 初恋・地獄篇(1968/日)

夜、ホテルの部屋に入るシュン−高橋章夫とナナミ−石井くに子のシーンから始まる。壁に掛かっている裸婦の絵。二人は出会ってすぐのようだ。ナナミは水前寺清子の「いっぽんどっこの唄」を唄う。人のやれないことをやれ。
ゑぎ

 本作の中のBGMで、流行歌や既成曲が使われる場面を備忘的に列記しよう。上述のホテルのシーンで二人のフラッシュバックが挿入されるが、シュンが実母と別れる場面で流れている菅原都々子「連絡船の唄」。実母の後景に煙突が映った斜め構図の挿入は全編でも最も良い部分だと思う。ナナミの職場−ヌードモデル、というか個室でヌードを見せる風俗店のフラッシュバックでは、ザ・ピーナッツ「恋のフーガ」が流れる。シュンが寺の敷地で女児(幼い羽仁未央)にイタズラをしたと見紛われ、男たちに追いかけられるシーン。手持ちのブレ画面でかかるのは、北島三郎「函館の女」。謎の地下室SM撮影会を主催する髭男−湯浅実とナナミとシュンが仏像の下で会話する場面で黒沢明とロス・プリモスの「ラブユー東京」が流れるが、髭男の妻−額村貴美子左幸子の実妹で、左時枝の実姉。後に羽仁進の妻になる)のアップが挿入されるのは貴重だろう。ナナミがヌードモデルとして参加する海岸の撮影会のシーンではチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第一番」が劇伴。SM撮影会が行われていた地下室が、子供たちのバレエ教室に変わっている場面には「白鳥の湖」の「4羽の白鳥の踊り」。ヌード風俗店では「ひょっこりひょうたん島」のテーマがかかる。そして三波春夫「世界の国からこんにちは」をBGMに、路上で裸になるラーメン屋のシーン。「ラーメン屋さん、ヘンタイ!」って云う女性。これ可笑しい。警察が来るところまでゲリラ撮影か。この場面も強烈に印象に残る。

 画面造型で目を引いたのは、上にも書いた、幼いシュンと実母との別れのフラッシュバックもあるが、養母が彼のペドフィルを治療しようし、連れて行った病院での催眠療法のシーンだ。顔アップからパンすると、心象風景のスクリーンが現れる表現は面白いと思った。結句、養父によるシュンへの性的虐待が露呈する。あるいは、ナナミと同郷(静岡と云ったと思う)の友人(代数くん)とシュンと3人で行った高校の文化祭。代数くんんが作った8ミリ映画を見るのだが、この映画中映画で一部カラーのショットが挿入されるのは驚きのある良い趣向だと思う。この文化祭の後、ナナミとシュンの会話シーンで2人の口の動きが全く無いのに会話しているという見せ方も面白い。『不良少年』のアフレコの自己批評みたいに感じた。あと、SM撮影会のシーンは長いと思う。こゝのスローモーションショットが終盤にもフラッシュバックされるのが冗長さに輪をかける。

#備忘

・宿(じゅく)一番のカラダという科白があるので、ヌード風俗店は新宿にあるのだろう。新宿西口で、寂しい人たちのためにレコードを売っている女性が挿入されたりもする。

・シュンが「初恋だ!」と叫ぶ場面は上野か。冒頭のホテルも上野の近くだと思われる。終盤、シュンが不忍池から走り出し、都電軌道を通ってホテルに着く。

・羽仁未央のナゾナゾ「キャベツをむくと芯が出る。玉ねぎをむくと何が出る?」

(評価:★3)

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