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[コメント] 限りなき追跡(1953/米)

これも面白い西部劇。小さなツイスト、ギアシフトが沢山ある。クレジットバックは、緑の木々も見える岩山(モニュメントバレーに似ているが異なる。セドナ)。騎兵隊数騎に護衛された駅馬車が行く。
ゑぎ

 馬車の中には、ドナ・リードフィル・ケリーレオ・ゴードンフォレスト・ルイスがいる。ケリーとゴードンはコワモテで、ルイスは見るからにお人好しといった感じの脇役。リードは綺麗だが、私はやっぱりボワイエみたい(あるいは美空ひばりみたい)と思いながら見る。

 それはさておき、中継地の小さな町のホテルで、リードの恋人であるロック・ハドソンがサプライズ登場するのは、まずは小さなツイストだろう。2人のキスと抱擁が思いの外ねちっこく、さらに、それを見る女中のリアクションも異様な演出で、こういう部分でもフックを残す。また、このホテルの場面で、ケリーのリードに対する横恋慕や、ケリーに比べてゴードンの方がいくぶん良識があるというところをきちんと見せて、お膳立てする。

 翌日、駅馬車にはハドソンも乗り込んで、騎兵隊の護衛を伴い出発するが、この日の護衛者たちは実は強盗団で、その首謀者はケリーだった、という展開だ。この強盗団の中には、脇役時代のリー・マーヴィンネヴィル・ブランドもいる。こゝで、ハドソンは撃たれ、御者台から転落し地面に横たわる。ケリーたちは、ハドソンは死んだと思い、リードを連れてメキシコへ向かうのだ。

 こゝから、本作は、リードを連れた強盗団と、リード奪還のために追跡するハドソンとの状況を繋ぐ構成になっていくのだが、私はケリーのリードに対する恋情の強さが圧倒的にプロットを支配していると感じた(ハドソンの強烈な怒りの感情も描かれているけれど)。この点でゾクゾクさせられた。これが、最終盤になって腰砕けになるのは、本作の宜しくないところではあるが、終盤まで、仲間たちから(ゴードンだけでなく、かなり下っ端のマーヴィンやブランドからも)、女は足手まといだ、と云われ、再三もめるにも関わらず、執着するといった描かれ方をするのだ。

 また、本作の主要人物(ハドソン、リード、ケリー、ゴードン)は皆、南部人であり、南北戦争の敗残者だ。ケリーはリードに、かつての輝かしい南部の面影(端的にホンモノの貴婦人の面影)を過剰に投影している、あるいは、戦争を経た上での、ケリーとハドソンとの暴力に対する価値観の相違、といった部分の描写でも、懐深い映画だと感じる。

 そして、経緯は省くが、ハドソンには、かなり早い時点でゴードンが味方に付き、さらに、強盗団に恨みを抱いているインディアンのパット・ホーガン、ケリーの情婦のメキシコ人−ロバータ・ヘインズといった加勢者が現れるのも、それぞれ小さなツイストと云っていいだろう。彼らの活躍もあり、もちろんリードを奪還する帰結であるが、最後まで、ハドソンは誰一人殺さない、というのも(殺意はあったのだからそれは結果論ではあるが)徹底した作劇だと思う。あと、とびっきり印象に残るショットというものはないが、全編に亘って、全く違和感を覚えさせずに運動を捉え続ける画面造型だ。例えば後半の夜のシーンが連続する部分なんかでも、いわゆる「アメリカの夜」っぽい影が見えない、良い夜間シーンの造型だと思った。それと、3D映画らしく、物を手前に投げるといった演出もあるけれど、これ見よがしではないところもいい。

#駅馬車の場面で出て来る、フォレスト・ルイスは名バイプレーヤーだが、後に『男性の好きなスポーツ』ではロック・ハドソンのライバルを演じている。

#レオ・ゴードンがとても良い役なのも嬉しかった。この人はシーゲル作品での悪役というイメージが強い。本作翌年の『第十一号監房の暴動』では、ネヴィル・ブランドが主役でゴードンが強烈な悪役。さらに『殺し屋ネルスン』ではデリンジャー役。

#リードとケリーが部屋の中で2人だけのシーンでは、2人の体格差が際立つ。私は『大いなる西部』のジーン・シモンズチャック・コナーズを想い出した。暗転で隠蔽されるが、この後、ケリーはリードを凌辱したということかと思う。

(評価:★3)

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