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[コメント] 銀座化粧(1951/日)

服部時計店の時計台。子供がショーウィンドウを見る。舗道を走る子供。この子の走りっぷりと佇まいがいい。
ゑぎ

 続いて、銀座裏、新富町のしもた屋。カメラが二階の窓へクレーン移動して、化粧をしている田中絹代を映し出す。この導入部で既に引き付けられてしまうのだ。田中は冒頭の子供の母親。シングルマザーだ。

 田中が夜働くバーの名前は「BELAMI」。店内の最初のカットは、仰角で女給2人が階段を下りてくる、キャッチーなカットだ。バイオリンに合わせて歌う女の子や物売りの子供達が出たり入ったりする。ディゾルブで居座る客と女給たちをフルショットで見せる、時間経過表現なんかも、いい調子だ。

 田中は、妹のように可愛がっている女給の香川京子と一緒に暮らしている。香川は「男なんてケダモノ」と云っている。そこに、田中の友人(元同僚)の花井蘭子に頼まれて、東京案内をすることになった地方のお坊ちゃん、堀雄二が投入され、彼を巡って、田中と香川の二人の感情が描かれていく。田中は、堀と二人で上野動物園や銀座界隈を見物し、送りとどけた宿の窓から北斗七星を二人で見、堀のことを好きになる。その翌日、香川は、はからずも田中の代わりに新橋演舞場へ掘を案内することになるが、このシーンの二人の視線の演出が、見事に成瀬らしい。ラスト近く、田中と花井が道を二人歩きながら、掘のことを話すシーンも、これまた成瀬らしい人が歩く演出で、もう思わずニヤケてしまうのだ。曖昧なエンディングもまたしかり。本作あたりから、戦後の成瀬の傑作群がスタートする。

#備忘で脇役等を記述します。

・田中は、三味線のお師匠さん・清川玉枝の家の二階に住んでいる。三島雅夫が田中とワケありの男。防犯ベルの外交(セールス)をやり始めた。清川の旦那は柳永二郎

・花井蘭子は渋谷の近いところに住んでいる。旦那は小杉義男。清川のところに田中春男が習いに来ている。彼はコメディリリーフ。「とんでもはっぷん」という科白がある。1951年は『自由学校』と同年。

東野英治郎が悪役でワンポイント登場。田中を倉庫に連れ込もうとする。

(評価:★4)

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