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[コメント] 恋の秋(1998/仏)

イザベル−『緑の光線』のマリー・リヴィエールの家族が庭でランチを摂る場面から始まる。家族とは、夫と娘とその婚約者。娘たちの結婚式の打合せでもある。その中で、隣人のマガリを呼ぶかどうか、という話が出て来る。
ゑぎ

 マガリは葡萄農家(及びワイン醸造)を営む寡婦。イザベルがマガリの農場を訪問するシーンでは、若い女性−ロジーヌが家から出て来る。ロジーヌはマガリの息子の恋人。マガリと仲がいいのだ。イザベルは、マガリに、良い人を見つけて再婚したらどうか、という話をし、後日、勝手に(マガリに内緒で)結婚前提の恋人募集の新聞広告を出すのだ。

 また、場面は前後するが、ロジーヌにフォーカスされるプロットでは、彼女と高校教師エチエンヌ(ロジーヌの高校時代の教師でもある)との関係が描かれる。会話から、今は男女の関係はなく、ロジーヌは友達であり続けたいが、エチエンヌは性的対象としてロジーヌを見ているということが分かる。そこで、ロジーヌは、エチエンヌとマガリを、くっつけられないか、ということを考え始めるのだ。

 かくして、イザベルとロジーヌのそれぞれが、マガリに男性をあてがう、という作戦を遂行することになる。それが、イザベルの娘たちの結婚パーティ(イザベルの家の庭で行われる)を舞台とする、というのが後半のプロットだ。

 このように、本作も3人の女性(イザベルとロジーヌとマガリ)がほゞ同等ぐらいの比重で描かれているのだが、それでも矢張り、イザベルが主人公と云えるだろう。上で書いたように、彼女のシーンで始まるし、エンディングも彼女が夫とダンスするカットであることでもそう思う。しかしそれ以上に、本作における一番の見せ場が、彼女の場面であると思えるからだ。それは、結婚式当日の、マガリとマッチメイキングしようとしていた(新聞広告に募集してきた)男−ジェラルドとのシーンだ。一瞬、イザベルがジェラルドを誘惑するような、魔が差す瞬間が捉えられているのだ。私は、このスリリングな場面が本作の白眉だと思う。これは、深層心理に近い部分の真実が、当人にとっても、思いがけず表出する瞬間のスリルだ。ラストカットの彼女の意味深な表情がいい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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