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[コメント] 足にさわった女(1960/日)

1952年の市川崑版(越路吹雪池部良版)の、増村保造によるリメイクだが、市川が弟子筋の増村用に企画し、和田夏十と共に(増村と相談しながら?)かなり改変を加えていて、明らかに本作の方が、出来がよくなっていると私は思う。
ゑぎ

 オープニングは網タイツの女の脚を横にしたカット。スコープサイズの画面いっぱいに脚をとらえる。次いで、女性たちの脚のカットを繋いでクレジット。ナレーションは小泉博か?プロローグの列車内紹介シーン、これがとても面白い。ならず者だらけの無法地帯と化した列車内。実は、大辻伺郎が読んでいた小説の映像化シーンなのだ。

 本作の主人公は京マチ子ハナ肇。大辻は京マチ子の弟分で、前作市川版では伊藤雄之助がやっていた役。また、市川版で、山村聰が演じていた作家(坂々安古という名だった)の役は、本作では船越英二がやっている(役名は五無康祐)。

 市川版からのプロットの改変で決定的なのは、京マチ子の故郷の場所を下田から厚木に変えたこと、基地の町をロケーションにしたことだ。京マチ子と杉村春子が、基地をバックに道を歩く横移動カットの無常感。軍用機のカットは沢山出てくるが、民家(小屋)のすぐ上を低空飛行する合成カットの挿入には驚かされる。また、京マチ子の親類縁者はほとんど転出しており、ケバい江波杏子だけが残っている、といった部分も、市川版の親戚を集めた法事の場面よりも、この題材に相応しいと思う。

 また、タイトルを表す部分についても、本作は京マチ子の足が、ハナ肇の足を触る、という明確なカットがあり、タイトルの意味がちゃんと分かるので、落ち着きがいい(主役二人がタイトルを体現するので納得性が高い)。市川版では、冒頭、越路吹雪と単なる脇役である見明凡太朗の足が触れる場面しかなかったので、市川も和田も、修正を加えたかったのではないかと想像する。

#備忘で脇役等を記述します。

・大辻の隣の席の学生は、ジェリー藤尾。とてもイキのいい演技。ビュッフェで船越を接待する編集者は田宮二郎だ。田宮はこのシーンのみ。京マチ子の隣の席には多々良純の実業家。市川版では見明凡太朗がやった役。

・列車内で会うお婆さんに浦辺粂子。関西弁を喋る。市川版の三好栄子の役。列車内には他にボーイの谷啓、乗客で植木等がいる。熱海駅の駅員は犬塚弘

・厚木の巡査は潮万太郎。本作では見明凡太朗が警視庁の警視として登場。市川版では藤原釜足だった。

(評価:★4)

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